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Wikipedia創始者が始めたオープンソース検索

「Wikia Search」、成功のシナリオ

2008年01月23日 17時02分更新

文● 板井博史

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ハードウェアリソースもユーザーで共有


 Wikia Searchは検索結果のランキングだけでなく、ウェブページの巡回にもユーザーの協力を仰ごうとしている。

Wikia Search

mini artilceの編集ページ。このあたりはWikiそのままで、Wikia Searchはウィキ+検索だとも言える

 検索対象となるページを巡回してデータを収集するプログラムをクローラーと言うが、Wikia Searchでは「Grub」という、オープンソースのウェブクローラーを配布している。これは、ユーザーが自分のコンピュータにGrubクライアントをインストールしておくと、コンピュータを使っていない時間にウェブをクロールして、データを集めてくれるというものだ。

 検索サイトの運営にはハードウェアコストがかなりかかると言われるが、ユーザーに負荷を分散するのは有効な手段かも知れない。なお、Grubのサイトで、データを多く集めたユーザーのランキングが発表されているなど、こちらもユーザーのモチベーションを高める工夫がなされている。

 Wikia Searchでは、これらユーザーの評価やウェブページをクロールしたデータも公開する予定である。より検索精度を向上させるための素材としてさまざまなプログラマーたちに利用させ、その結果のフィードバックを受けて、さらなる発展を遂げるという循環もできるだろう。このあたりは、ほかのオープンソースのソフトウェアと同じだ。



もっとも重要で、一番難しい問題は何か?


 しかし、これらの画期的な要素をもってしても、Wikia Searchが成功するのは簡単であるとは言えないだろう。最初にして最大の難関が、「ユーザーコミュニティーがうまく形成されるか」という問題だ。

 ネットサービスのユーザーは最初に使い勝手が悪いと、二度とそのサービスを使おうとしないものだ。α版の出来が悪かったことで、先進的なユーザーの多くがそっぽを向いてしまった可能性もある。また、mini articleの執筆はWikipediaと同じようにユーザーの興味を引き付けるかも知れないが、Wikipedia執筆者にとっては二度手間にも見えかねない。

 写真の共有もいまさら物珍しい機能ではないだろう。より多くのユーザーを集めるためには、もっとユーザーの興味を引き付ける機能が必要だ。なにより、Wikia Searchのソーシャル的な機能はまだあまり知られていないので、もっとユーザーに知らしめる必要がある。

 もちろん大手検索もソーシャル検索について研究を続けていることだろう。グーグルもヤフーもパーソナライズ検索以降、まだ新しい方向性を打ち出せていないようだが、今後さらに画期的な検索技術がこれらの企業から登場することもあり得る。これら先行する強敵を相手にするには、開発者のコミュニティーも育てて行かなくてはならないだろう。



検索はコミュニティー化されていない「最後の砦」


 それにしても、これまで成功したネットサービスを見渡すと、コミュニティー化したサービスがなんと多いことだろう。mixiしかり、Wikipediaしかり、2ちゃんねるしかり。ヤフオクやAmazonのようなサービスにすら、コミュニティー的な空気が感じられる。むしろ、コミュニティー化していないサービスは成功していないとすら言えるのではないだろうか?

 そう考えると、検索はいまだコミュニティーが形成されていない最後のサービスなのかもしれない。Wikia Searchが進むべきはコミュニティー化への道であり、その点に関して最初からビジョンが明確であることが、筆者には一番成功の可能性を感じるのである。

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