ウィキアは検索分野の素人ではない
Wikia Searchは、Googleと同じようなキーワード型の検索エンジンである。検索ウィンドウにキーワードを入力すると結果が列挙されるという点ではほかの検索エンジンとの違いはあまりないが、アカウントを取得することで「プロフィールの作成」や「写真の共有」など、ソーシャルネットワーキング機能を利用できる。
登録ユーザーが自由に編集できる「mini article」というキーワード辞典のようなものや、後述する検索結果の評価システムなどもあり、プログラマーだけが開発に参加できるほかのオープンソースのソフトと違い、一般ユーザーが発展に寄与できる余地が多いのが特徴だ。
Wikia Searchを運営しているのは、米ウィキア社という営利企業だ。ウィキアの主な事業はWikiのホスティングサービス。Wikipediaのパロディ版「アンサイクロペディア」や、スポーツに関するウィキ+SNSサイト「ArmchairGM」のほか、テレビドラマやゲームなどあらゆるジャンルに関するWikiが自由に作れるサービスを運営している。
Wikipediaを始める以前、ジミー・ウェールズは、Bomisという会社で検索ポータル事業を展開していたというから、まるで畑違いのことを始めたわけでもない。ユーザーコミュニティーのバックアップによってWikipediaが爆発的成功を収めたことから、検索も企業内で開発するよりコミュニティーのサポートを得た方が得策だと考えたことは想像に難くない。このユーザーコミュニティーの力こそが、Wikia Searchが成功する可能性を一番感じさせるところなのだが、まずはWikia Searchが切り込もうとしている現在の検索業界の状況を見てみよう。
実は「今こそ」がチャンスだ
検索業界はとかく「技術力」や「資金力」がものを言う世界だ。そんな中に新興の検索エンジンが切り込む余地はあるのだろうか? 筆者は、実は今こそがチャンスではないかと思っている。数年前からユーザーコミュニティーの力を検索に利用する「ソーシャル検索」がテストされているが、まだ大手検索エンジンはこの方面で成果を出していない。Wikia Searchがソーシャル検索として成功することができれば、急速な発展も十分あり得る。
ユーザーコミュニティーがどれほどの実力を持っているか、Wikipediaを思い出して欲しい。2001年のスタートから数年間はあまり使い物にならなかったWikipediaが、いまやネットでの調べ物に欠かせないものとなった。Wikipediaが成功した理由はさまざまだが、最も大きいのは「持っている知識を皆に披露したい」という、ユーザー心理をうまくくすぐった点にあるのではないだろうか。