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栗原潔が語る 「MSのFAST買収」

マイクロソフトは、いいところに目を付けた──企業内検索をめぐる新たな主導権争い

2008年01月11日 18時40分更新

文● 栗原潔

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新たなビジネスモデルを模索するマイクロソフト


 マイクロソフトがこの買収に踏み切った理由は明らかだ。

 同社ビジネスの基盤となっている単体ソフトウェア──WindowsやOfficeのバージョンアップ──による収益増が勢いを失っているからだ。仮に、Officeの新バージョンで単体製品として機能が追加されても、それだけで継続的にバージョンアップしていきたいと考えるユーザーは少ないだろう。

 マイクロソフトは、新たなビジネスモデルを模索している。そのひとつの結果が、昨年5月のネット広告企業・英Quantive社の買収である。60億ドル(約6560億円)規模という買収金額は業界を驚かせた。しかし、グーグルが基本的に広告収益だけで魅力的なビジネスを展開しており、米ダブルクリック社の買収に見られるように、さらにこの分野の拡大を目指している。つまり、マイクロソフトにとっては当然とも言える買収だったわけである。

 そして、連載でも繰り返し指摘してきたように、エンタープライズサーチは単なる検索機能を提供するユーティリティーではない。企業内の柔軟な情報統合を提供し、組織内の集合知から価値を創成するための重要なテクノロジーである。マイクロソフトがこの分野にフォーカスするのは当然であると言えよう。



宿敵グーグルより先に、企業内検索での主導権を取れるか?


 マイクロソフトはこの分野では「Microsoft Search Server 2008」および無償版の「Microsoft Search Server Express 2008」を提供している(日本では未発表)。しかし、ハイエンドにおける製品の競争力という点では十分とは言えなかった。

 一方、グーグルも、ハイエンドのエンタープライズサーチの世界では、まだ競争力を発揮できていない。しかし、グーグルがいったん本気を出せば、そのブランド力の高さも相まってエンタープライズサーチ市場でも支配的地位を獲得できる可能性は高いだろう。ゆえに、ハイエンドのエンタープライズサーチの分野で先手を打ちたいマイクロソフトにとってFASTの買収は、当然すぎるほどの当然な戦略であると思う。

 買収成立後に、マイクロソフトがFAST社をどのように扱っていくかについては、現時点では情報がない。一般に、既に企業文化が確立している企業どうしの合併は困難な課題だ。企業文化の衝突が合併のメリットを相殺してしまうことが多い。しかし、FASTはテクノロジー主導型の企業であり、マイクロソフトの企業文化との衝突は比較的小さいと考えられる。マイクロソフトの北欧の研究開発拠点のような形で機能することは充分に可能だろう。

 企業ユーザーにとっては今まで以上にエンタープライズサーチに注目すべき状況になったと言えそうだ。


筆者紹介-栗原潔

著者近影 - 栗原潔さん

(株)テックバイザージェイピー代表、弁理士。日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より独立。先進ITと知財を中心としたコンサルティング業務に従事している。東京大学工学部卒、米MIT計算機科学科修士課程修了。主な訳書に『ライフサイクル・イノベーション』(ジェフリー・ムーア著、翔泳社刊)がある。


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