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石井裕の“デジタルの感触” 第24回

石井裕の“デジタルの感触”

多重マシン生活者の環境シンクロ技法

2007年12月29日 21時10分更新

文● 石井裕(MITメディア・ラボ教授)

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視聴者への返答


 ところで、最初の問い合わせは、故郷札幌市の方から英語のメールが届いたので、こちらも英語で返事を送った。

「I guess you saw the NHK TV program "Professional." The device on the back of my PowerBook G4 screen is this FireLite hard drive (120GB).」(NHKのテレビ番組「プロフェッショナル」をご覧になったのかと思います。PowerBook G4のスクリーン裏側に装着されたデバイスは「FireLite」というハードディスク〔120GB〕です。)

「I have OS, all the Applications and my data files in this external drive, and boot the machine from this drive.」(私はOSやすべてのアプリケーション、データファイルをこの外付けドライブに入れて、このドライブからマシンを起動しています。)

「Since I use three Macintosh computers, to keep the working environments consistent, I use this external *master* hard drive to boot all the machines. When I use each machine, I sync the contents of external drive to internal drive for backup. It means I have three backups of the master (external) disk.」(私は3台のマックを使っていますが、その作業環境の一貫性を保つため、この外付け〈マスター〉ハードディスクからすべてのマシンを起動させているのです。別のマシンを使うときは、外付けドライブの内容をバックアップとして内蔵ドライブへシンクロします。つまり、〔外付け〕マスターディスクのバックアップを3つ所有しているわけです。)

「Hope this answered your question.」(これでお答になっているでしょうか。)



外付けデバイスならではの安心感


 さて、今回は複数のPowerBook G4を使って生活する「多重マシン生活者の環境シンクロ技法」を紹介した。常にネットに接続できる世界に生きていれば、ネット経由でのシンクロが自然かもしれない。しかし、自分の手で触れることのできる「タンジブル」なデバイス(小型外付けハードディスク)には、自分の人生のすべてを入れて持ち運べるだけの安心感がある。ちょっとしたアクシデントで途切れてしまう、ネットの向こうにあるバーチャルな「仮想ディスク」空間。この「不確かさ」に比べると、天と地ほどの差があると思う。

 読者の方々も、もし複数マシンのシンクロでお悩みであれば、ぜひこの技法を実践されることをお勧めしたい。

(MacPeople 2007年6月号より転載)


筆者紹介─石井裕


著者近影

米マサチューセッツ工科大学メディア・ラボ教授。人とデジタル情報、物理環境のシームレスなインターフェースを探求する「Tangible Media Group」を設立・指導するとともに、学内最大のコンソーシアム「Things That Think」の共同ディレクターを務める。'01年には日本人として初めてメディア・ラボの「テニュア」を取得。'06年「CHI Academy」選出。「人生の9割が詰まった」というPowerBook G4を片手に、世界中をエネルギッシュに飛び回る。



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