普段意識することはあまりありませんが、私たちはさまざまなインターフェースを介して日々を過ごしています。このインターフェースについて考察することは、エンジニアがスキルアップするうえで非常に有意義なことです。そこで「理想のインターフェース」とはどういったものなのかを考えてみます。
たとえば、かつてのインターネットの地図情報サービス。地図の表示範囲を移動する場合、設置されている東西南北の矢印ボタンをクリックして、ブロック単位で移動させていました。そのため、表示範囲を変更するたびにインターフェースを意識することになり、地図の境界上に目的地があったりすると非常に見づらかったものです。ですが、現在はGoogleマップなどに代表されるように、地図は画面を切り替えることなく、ドラッグにより見たい位置までスクロールさせて表示できるようになっています。つまりインターフェースを意識することなく、とてつもなく広範囲な1枚の地図の感覚で利用でき、目的地の位置もつかみやすくなったのです。このように、利用者にとって“その存在を意識しないインターフェース”は理想だと言えます。では、エンジニアが、作り手として実際に開発するなら、どこに注意すべきなのでしょうか。
まず初めに「インターフェースを介してユーザーに何を提供するのか」をはっきりさせてみて下さい。先ほどの地図の例をあげると、これまで紙だった地図をインターネット・サービスにすることで、利用者にどのような新しいサービス価値を提供できるのかを考えてみます。地図上を歩くといったイメージを価値として提供するのであれば、ドラッグしながら移動できるようなインターフェースがアイディアとして考えられるでしょう。また、町並みの眺望の体験を提供するのであれば、3Dなどを利用した立体的な地図といった方向性もあります。
そして、ユーザーに「提供するもの」が決まったら、次にその目的にそってインターフェースをデザインしていきます。実務では、ここが一番難しいかもしれません。デザインを考える際には、利用できる技術(FlashやAjaxなど)の可能性と限界を考えなくてはいけませんし、ユーザービリティの面からの検討も欠かせません。ただ、普遍的なポイントとしては「ユーザーが直感的に利用できること」が優れているということは言えます。自動ドアはユーザーがドアの前に立てば開くのであり、自動ドアについての学習は必要ありません。当たり前のようですが、そのこらいわかりやすいインターフェースを目指すべきでしょう。
また、これら以外にもさまざまな主体によって、そのインターフェースが利用されることも意識する必要があります。たとえば、最近Webデザインの分野で言われているWebスタンダードなどでは、情報とデザインの分離を利用者の状況に即して行なうことを意識しています。そして、プログラムなど人間以外のものがインターフェースを介してアクセスすることを想定する必要も多くなってきました。サーチエンジンでの利用されやすさや、音声読み上げソフトへの対応なども重要な要素の1つになります。
技術者は個々の要素技術に対しては、比較的アンテナを敏感にさせていると思いますが、インターフェースの視座から考えることで、我々があたりまえのように利用しているサービスも、まだまだ進歩の余地が残されているのではないでしょうか。
Illustration:Aiko Yamamoto
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