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石井裕の“デジタルの感触” 第23回

石井裕の“デジタルの感触”

「プロフェッショナル 仕事の流儀」出演を振り返る

2007年12月22日 20時37分更新

文● 石井裕(MITメディア・ラボ教授)

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番組放映の反響


 番組が放送された2月8日、放映が終わるか終わらないかあたりから、日本の視聴者からメールが入り始めた。ひと昔前ならば放送局あてに寄せられる感想も、今では直接本人に生の声が届く。特に研究者などはグーグルに名前を入れて検索するだけで、あっという間にメールアドレスが調べられる。放送というマスメディアとピア・トゥ・ピア型の電子メールの妙な組み合わせだ。放送後1日で私は30通を超えるメールを受け取った。どれも元気づけれられるメッセージばかりだった。

 私にメールを送ってくれた人たちの約半分は、これまでの人生のどこかで私に会い、私のことを覚えていてくれた人たちだ。例えば、小学校や中学校時代の「知人」から、30〜40年もの音信不通を超えて突然メールが舞い込む。私がかつて勤務していたNTTの元同僚や先輩からのメールも多かった。こうしたメールに触れると、懐かしさでいっぱいになる。

 メールの残り半分は、今まで会ったことがない人たち。その中でも受験生からのメッセージが最も多く、続いて企業で働いているエンジニアの方々。飽食の時代では感じることのできない「飢餓感」が、少しでも彼らに伝えられたこと、そして「頑張らなくては」という気持ちを伝播できたことをとてもうれしく思う。

 今回の放送では、個々の研究プロジェクトに関する詳細な紹介がほとんどなく、私が学生を指導しているシーンに焦点があてられていた。白熱した真剣勝負の研究討論の風景を軸に、延々と続く知的バトルの中で、指導の効果がなかなか表れずに悩む私自身──といった人間ドラマが中心。もしこのような機会がもう一度あったら、今度は研究の中身そのものも深く紹介してほしいと思う。


(次ページに続く)

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