巷では、仕事術やハウツーを取り上げた書籍や情報サイトがあふれています。それらビジネスノウハウを試している人も多いかと思いますが、実際の業務に取り入れるとなるとなかなか難しいものでしょう。そこで、新しいことに取り組む際のコツとしてお薦めしたいのが、今回紹介する「KISS(Keep it Simple,Stupid:単純にしろよ、バカ)」です。
KISSというと、おそらくITエンジニアとして仕事をしている人なら身近な言葉なのではないでしょうか。プログラミングを行なう際に、プログラムコードをシンプルに(道理的に見て素直に)作ることをKISSと言います。シンプルにする──実際にコードは短めにし、処理を誰もが考えるように素直に作る──ことは、成果物を扱いやすく、よりよいものにすることにつながります。そこで、この優れた方法を今度は仕事術習得においても活用してみようというわけです。
では、「XXX hacks」「XXXコンセプト」「XXX術」などの習得において、具体的にKISSを活用するとはどういうことなのか。
簡単な例をあげてみます。
■付箋を使った仕事管理術
付箋の大きさで仕事の種類を、色で優先順位の意味を与えて管理する
この管理術では、あえて「1種類の付箋だけを使って、最優先事項だけに貼る」ことのみを選択し、実践してみます。本当に役立つノウハウというのは、そのノウハウの中のもっとも代表的な方法、つまり“キモ”の部分だけでも取り入れれば十分効果が出るものです。
そして効果が出たら、それを続けていき、少しずつ便利なように今度は自分なりに変化させていきます。すると、おのずと本来のノウハウに近づいていくものです。逆にこの“キモ”だけのやり方で破綻したり、あまり効果が出なければ、「取り入れにくい仕事術」「あまり効果のないハウツー」と判断して下さい。
筆者の場合、PDCAの回で紹介した「自分の仕事を記録する」で、KISSを取り入れています。仕事術を紹介した書籍などには方法論を細かく説明しているものもありますが、筆者は「自分のやった仕事量を知る」という目的を設定し、それに合わせて「1日でやった仕事名をメモする」という、いわゆるシンプルなキモの部分だけを取り入れました。つまり、記録方法など細かいことを気にするよりも、自分なりに続けることにこだわったのです。
もう1つ、KISSを心がけるべき理由があります。方法論やノウハウは、あくまで利用する個人の「目的」に依存するものであって、先に立つものではありません。ですので、すでに行なっている日々の仕事や目的に、突然複雑なノウハウを適用するのは、非常に困難なことです。勉強熱心な人にありがちですが、自分自身の主体性を忘れて、方法論やノウハウに振り回されることがあります。KISS自体も自己の主体性や目的のもとに、方法論やノウハウを取り入れる1つのコツとして活用していくのがよいでしょう。
Illustration:Aiko Yamamoto
●バックナンバー第1回 IT技術を考える~ECMAScript~
第2回 エンジニアの成長を助けるビジネススキル~PDCA~
第3回 しっかり稼げてヤリガイあり~新インクリメンタル型開発~
第4回 自分のことってわかってる?~生産性を考える~
第5回 テクニックは人に見せないと!~コードレビュー~

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