慣れたインターフェースを大切にしたい
もうひとつの画期的な入力インターフェースの搭載については、ひとことで言えば「パソコンのインターフェースをケータイ向けに最適化した」ということ。
ケータイのポインティングデバイスというと、矢印キーが一般的だろう。
矢印キーは、当たり前ながら、1回押すとカーソルが1つ動く。キーを押しっぱなしにすれば、連続してスクロールすることもできるが、目的の項目にピタっと止めたいときは、キーを連打して必要な分だけ動かすほうがいい。
連打といえば、10秒間の連打数を競うゲーム(ハドソンの「シュウォッチ」など)があったほどだから、特にファミコンに慣れ親しんだゲーム世代にとってはおなじみのものだ。
もちろん、以前の「W53S」の記事でも取り上げたように、連打という操作は決して素晴らしいわけではない。
矢印キーに変わるインターフェースとしては、W53Sに搭載されている「+JOG」のように矢印キーと同じ動作を別のデバイスで実現するものや、iPhoneのように「直接液晶ディスプレーのボタンに指で触ればいいじゃないか」とタッチパネルを備えたものなどが出てきた。
しかしながら依然として矢印キーのケータイは発売され続けており、この旧来のインターフェースを選ぶ人もいるのだ。
トラックボール派の僕だから……
そうした「できれば慣れたインターフェースを使いたい」という人たちの気持ちもよく分かる。それは、僕自身が経験してきたことでもあるからだ。
ノートパソコンに搭載される標準的なポインティングデバイスは、今でこそタッチパッドだが、僕が初めて手にしたノートパソコン(DECの「digital HiNote Ultra II」)には、トラックボールが内蔵されていた。マウスではない、このトラックボールというデバイスに僕はほれ込んだものだ。
思い切りボールを回して、それを止める。広い画面の中を移動していくポインターの操作方法として、とても楽だ。一方、微妙な操作が必要な画像やイラストの編集作業の場面でも、指先に集中すれば、細かく正確なポインティングを実現できた。
いまだに僕は、デスクトップのMacintoshで握って余りあるくらい大きなボールを持つケンジントン製トラックボールを使っている。それほど慣れたインターフェースを手放したくない、という意識は強いのだ。
トラックボール付きのケータイはさすがに出てこないと思うけれど、慣れたインターフェースの心地よい感覚を、ケータイにも持ち込めたらいいんじゃないか? そこに答えを出してくれたのがN905iである。
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