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デジタル化の破壊的イノベーションとは?

池田信夫が語る、「ムーアの法則」と日本の経済(前編)

2007年12月21日 11時15分更新

文● 松本佳代子、語り●池田信夫

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日本人は貧乏になっている


 本の中でも書きましたが、「ダイヤモンドと水」という有名な例があります。ダイヤモンドは生活には不必要で、水は生活に必要なものです。でもダイヤモンドが高いのは希少だからです。いくら不必要なものでも希少なものには値段が付くし、水や空気のような過剰なものには値段がつかない――そういうものを経済学では「自由財」と呼びます――ウェブ上では、ほとんどの情報が自由財になっています。

 こういう場合、過剰な情報を浪費して稀少なもの――人々の関心――を集めるビジネスが成功します。その典型はグーグルで、45万台ものコンピュータを浪費して、世界中の人々の関心を集め、1兆円企業になりました。時価総額では20兆円ですよ。10年も経たずにトヨタやほかの日本の企業を超えました。

 今の日本は「格差が広がっている」ことよりも、「成長していない」ことを問題にしなければなりません。90年代以降の名目成長率は平均してゼロに近い。一人当たりのGDPは1993年には1位だったのが、2006年の統計では20位に下落してます。

 つまり、日本人は貧乏になっているんです。

 今の日本は1980年代のアメリカと同じ状況です。アメリカ経済はその状況に危機感を持って、企業買収やITなどで立ち直りました。イギリスもサッチャー時代にボロボロだったものを立て直しました。日本は立ち直る前のアメリカやイギリスの状況に似ています。古い企業がマーケットを占拠して、著作権だ何だと、新しい企業をブロックしています。

 このままでは新しい経済の付加価値が生まれない。数十兆円の可能性を失っているわけです。日本はビジネスモデルの転換ができていないんです。

<では、日本経済を救うにはどうすればいいのか?>

 日本経済を救う方法は、「ITを利用したグローバル化」だと池田氏は述べる。くわしくは「過剰と破壊の経済学―『ムーアの法則』で何が変わるのか?」の終盤に述べられているので興味のある人は、ぜひ目を通していただきたい。

後編へ続く)


池田信夫氏プロフィール


1953年京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退職後。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は上武大学大学院経営管理研究科教授。学術博士(慶應義塾大学)。著書に「情報技術と組織のアーキテクチャ」(NTT出版)、「電波利権」(新潮新書)、「ウェブは資本主義を超える」(日経BP社)などがある。

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