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ThinkPadの冷却ファンは「ふくろうの羽」から生まれた!

2007年12月21日 09時00分更新

文● 編集部 小浜雅胤

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 パソコンの処理能力が上がるにつれ、パソコンメーカーの技術者が頭を悩ませる問題がある。CPUなどパソコンパーツの「発熱」だ。特に最近では、CPUだけでなくGPUや通信関係パーツの温度も上昇傾向にある。その上、パソコン本体の小型薄型化も進めなくてはならない。パソコンメーカーは、各社さまざまな工夫を熱対策に凝らしているのだ。

 一般ユーザーの目にはなかなか触れることがない熱対策の技術。去る18日にレノボジャパン(株)が開催したThinkPadの熱設計に関するテクノロジーブリーフィングでは、同社の熱設計に関するノウハウが解説された。高品質で知られるThinkPadにはどんな熱対策の技術が詰め込まれているのか? 当日の様子をお届けする。



熱設計には4つの重要なポイントがある


同社テクニカルマスターの中村聡伸氏

 講演を行なったのは、同社テクニカルマスターの中村聡伸氏。中村氏は、ThinkPadブランドが立ち上がった1992年から「ThinkPad Tシリーズ」の機構設計に携わっている人物で、現在はThinkPad熱設計チームリーダーを務めている。

 中村氏はブリーフィングの冒頭で、熱設計において重要な要素として、「筐体や素子の温度」、「冷却装置のサイズや重さ」、「CPU性能」、「騒音ノイズレベル」の4つをあげた。

熱設計における4つの重要な要素

熱設計における4つの重要な要素

 ファンの回転数を上げれば筐体温度は下がるが、同時にファンの音がうるさくなる。かといってヒートシンクやヒートパネルを大きくして温度を下げても、今度はパソコン本体が重くなってしまう。「4つの要素のどれも犠牲にしないようにバランスを取り、熱設計を行なうことが重要」と中村氏は話す。



熱設計を支える3本柱


 ThinkPad熱設計の歴史で、排熱処理を大幅に改善したのが、「ヒートパイプ冷却装置」、「ファン冷却装置」、「システムインテグレーション」だという。

ThinkPad熱設計の歴史

ThinkPad熱設計の歴史

ヒートパイプ冷却装置の歴史

ヒートパイプ冷却装置の歴史

ヒートパイプ冷却装置の仕組み

CPUなどから生じた熱が、ヒートパイプを経由し、離れた場所にあるヒートシンクに伝わる仕組み

システムインテグレーションの歴史

システムインテグレーションの歴史

「Material Hybrid」

冷却性能は低いが重量は軽いアルミニウムと、冷却性能は高いが重い銅を組み合わせた「Material Hybrid」などが生まれた

 1994年、「ファンなし」での冷却にこだわった中村氏たちは、ノートパソコンでは世界初となるヒートパイプを使った冷却装置を開発する。しばらくヒートパイプをメインとした熱対策を続けるが、次第にCPUの消費電力の上昇に追いつかなくなり、1997年に初めて冷却ファンを搭載する。さらに1998年には、冷却ファンとヒートパイプを組み合わせた「ハイブリットタイプ」の冷却装置を開発。このころから複数の技術を組み合わせて最適化するシステムインテグレーションを意識するようにる。

 ブリーフィングでは、それぞれの技術について詳細な解説が行なわれたが、中でも興味深かったのが、2006年の「T60」から搭載されるようになった「Owl Blade」という冷却ファンの話だ。

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