テーマは絞ったほうがいい。でもそれは「正しい」のか?
例えば私が読む立場になって考えてみよう。以前、あるブログをRSSリーダーに登録したことがある。理由はメディア論がバツグンにおもしろいからだ。
ところがそのブログの筆者はいろんなことに興味がある。だからメインで書いてる主な3ジャンルだけあげても、「メディア論」と「音楽」「ゲーム」の比率が2:3:5である。つまり私が読みたいメディア論は、10~15日に1回更新があるかないかだった。
ところがご多聞にもれず、私のRSSリーダーには膨大な数のブログがひしめいている。結局、いつしかそのブログの更新はチェックしなくなり、削除してしまった。
もし仮にその筆者が3日に1回、メディア論を書いていれば、私は今でも読み続けているだろう。また私だけでなく、私と似たような読者がひょっとしたら1万人いるかもしれない。もしそうだとすれば、メディア論にテーマを絞ればこの1万人の支持は確実に得られる。
これがいいことなのか? 悪いことなのか? 判断はその人本人がすることである。なにしろ更新頻度からいえば、その筆者がいちばん興味があるのはゲームなのだから。
「プロブロガー願望期」を迎えてからがむずかしい
好きなことを書いているのがいちばん幸せだ、といえばそうだ。一方、「たくさんの人に読まれたい」と考え、そのための戦略に沿って書くのもまたアリだろう。
ただひとつ言えるのは、ビュー数を考え始めた冒頭の「彼」の発想は、何らかのメディアを発信・発行し、ビジネスにしている玄人さんの脳内そのものだってことだ。その意味では今やプロの出版人だけでなく、素人さんも売れる媒体を日夜考えているのである。
さて「彼」は今やブログ青春時代を過ぎ、プロブロガー願望期に突入した。さあここからが難しい。果たして「彼」はこの難局を乗り切り、ブロガーとして立派な社会人になれるのか?
いやそれ以前に社会人になること自体がいいことなのか? 悪いことなのか?
それは神のみぞ知る、である。
松岡美樹(まつおかみき)
新聞、出版社を経てフリーランスのライター。ブロードバンド・ニュースサイトの「RBB TODAY」や、アスキーなどに連載・寄稿している。著書に『ニッポンの挑戦 インターネットの夜明け』(RBB PRESS/オーム社)などがある。自身のブログ「すちゃらかな日常 松岡美樹」も運営している。
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