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【インタビュー】世界一魅力的な海賊「パイレーツ・オブ・カリビアン」はこうして作られた!

2007年12月14日 10時00分更新

文● 千葉英寿

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パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド
のメイキング風景とは?


 続いて、ジョン・ノール氏がPhotoshop worldの基調講演で語った、「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」のメイキングのダイジェストをお伝えする。ノール氏はVFX制作について3つのテーマに分けて語った。

1.Enviroments & Ship(環境と船)

 基本となる映像と俳優の演技は、そのほとんどが実写で撮影されている。そこに本作のもうひとつの主役とも言えるブラックパール号などの船がCGで制作され、デジタル合成されている。船が動くシーンでは、代わりに車両を動かし、それを元に船の映像が合成された。中には実写映像と合成だけで制作できないシーンもあった。とりわけ海賊たちの入り江はとても複雑で、一人のデザイナーが8ヵ月を費やして制作したという。

何もないところで演技をするキャプテン・ジャック・スパロウ役のジョニー・デップ氏(左)。そこにブラック・パール号がデジタル合成されている(右)。なお、以下のメイキング画像はジョン・ノール氏へのインタビュー中に見せていただいたもの

8ヵ月をかけてCGで描き出した入り江

複雑な入り江はデザイナーが8ヵ月をかけてCGで描き出した



2.Davy & his Crew(デイヴィ・ジョーンズとクルー)

 デイヴィ・ジョーンズとクルーはCGで描かれているが、すべて俳優が実際に演じている映像をベースに、アニメーションを施して映像化している。モーションキャプチャーを手法としてはいるが、通常のモーションキャプチャはマーカーを付けたスーツに役者が身を包み、専用のスタジオで演じて、カメラで撮影するのだが、本作ではマーカーをつけたグレイのスーツを役者が着て、実写の撮影現場で実写での撮影とまったく変わらない状況で演じる。あとは、その映像に役者の骨格を入れこんだ映像を作成し、これを元にアニメーションを施す。この手法により、実写と変わらない俳優の演技、表現を実現している。

ビル・ナイ氏演ずるデイヴィ・ジョーンズ。マーカーがついたグレイのスーツを着て、実写の現場で演技する(左)。あとは、その映像に骨格を加えて(右)、アニメーションを施している

 デイビィ・ジョーンズのもうひとつの大きな特徴が、蛸のようなひげだ。触手に当たる部分の一本一本のオブジェクトがいくつかの節からなっていて、複雑な動きができるようになっている。これをコントロールするプログラムを作成し、さまざまな動きのパターンが用意された。講演では、このひげのパラメータの入力を間違ってしまい、髭がビョンビョンはねてしまったという失敗映像が公開された。ノール氏は「この動きがとても気に入ったので、監督に使ってほしいと言って、心臓を突かれて死ぬところで使いました」と語った。

シリーズ最大の謎だったデイヴィ・ジョーンズを蛸ひげ。蛸の触手のように動くひげのオブジェクトが開発され、さまざまな動きのバリエーションが用意された(左)。撮影した映像にこのオブジェクトを加え(中央)、これを基にアニメーションが制作された(右)



3.Maelstorm(渦巻き)

 海のシーンでは多くが現実のもの(実写映像)を使っているが、大きな嵐で起こる渦のシーンはCGで制作した。この渦に合成するのが、航空機の格納庫内に組んだブラックパール号とフライングダッチ号の実物大セット。3D CGで作り出す渦は莫大なメモリーを必要とするので、32GBものメモリーを搭載したILMでも最大のコンピューターシステムを使用した。

 最初に合成してレンダリングしたものを監督に見せたが、「大きさが出ていない」という理由で駄目だと言われた。そこで、深さで無駄になっていたデータ(演算処理)の代わりに、面積を大きくとって深さを浅くし、大きな渦巻きを作ることができた。また、レンダリングコストをかけないように、細かなシーンごとに5つに分けてレンダリングし、それらを後から合成した。

渦の断面を見ると深さの半分ほどが無駄になっている(左)。そこで面積を拡げ、深さを浅くとることで(中央)、大きな渦巻きを作ることができた(右)

船上の様子

船上の様子は航空機の倉庫に巨大なセットが組み上げられ、周囲にブルーバックを張り巡らせ演じた


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