「ぬかって」いて「まっとう」なものが好き
── サイトを通して、大山さんはモダニズム系の団地に高評価を下されている気がします。
大山 あれ? そうですか? 僕あまりデザインでどうこうというのはないですよ。団地が大量に作られた60~70年代はお金も納期も限られていて、「住宅足りない。どうしよう」と当時の公団があわてて作ったので、そんなに小洒落ている暇はなかったと思うんです。
ただ、そうした厳しい制約がある中で、たずさわる人はどうにか格好良くしたいと努力して、壁にピンク色のペンキを塗ったりしているんです。そういうところが、いじらくしてたまらないですよね(笑)。
── そういう「玉にキズ」的なところに注目されますよね(笑)。大山さんが「オデキ」と呼んでいる、団地の中階で突然張りだしている部分とか。
大山 玉にキズというか、玉がないですよね。キズしかないというか(笑)。たしかに、そういう「ぬかっている」、つまり抜けている感じは好きです。本当はみんな完璧にやりたいと思っているんでしょうけど、日々の仕事でどうしても抜けるところが出てくる。
団地の「オデキ」は、中間水槽が入っていることが多いんです。集合住宅に必要な機能なのは分かるんですけど、あんなに出っぱらせなくてもいいだろと。なんというか「やっちゃったなー」感、ぬかった感がいいですね。あれを綺麗に収める費用とか時間がなかったんだろうなというところがいいですよね。今は絶対あんなことしないじゃないですか。
「まっとうな名前」であることの意味
── なるほど(笑)。ただ、その中でも、河原町団地は結構格好よくないですか?
大山 あれはすごいですね。有名な建築家に頼んで設計されたものなんですよ。
── 河原町団地の名前を小洒落ずに付けたことについて高評価をされていましたね。
大山 (笑)。高評価というか、まっとうですよね。80年代以降のマンションって、「リバーサイド○○」とかみっともない名前が多いじゃないですか。対して、「河原町にあるから河原町団地」というのは、すごくまっとうだと思います。
── 「みっともない」の根源にあるのは、製作者の自演出過剰っぷりですか?
大山 というより、住宅が「商品」になったからだと思います。公団が70年代までに作っていたのは商品ではなく「インフラ」なんです。商品くさくなると、名前だけでなく、住宅にも大理石使ったり、レンガの見せ物を張ってみたりと、みっともなくなる(笑)。
── だから、マンションではなくて団地なわけですね。
大山 そうです。
── ちなみにDPZでは、「ぬかった」系のモノや景色をレポートしていますよね。あれはDPZで記者を始めてから趣味を広げていったんですか?
大山 いや、昔から持っていたネタです。書きたいネタは一杯あるんですが、団地のサイトに載せるとまとまりがなくなるので、どこで掲載しようかと思っていたんです。そこでDPZに声をかけていただき、喜んでやっている感じです。
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