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【短期集中連載】新聞はネットに飲み込まれるか? 第9回

信頼できる「場の空気」はいかにして生まれたか? 「発言小町」に見る読売新聞社のCGM観(前編)

2007年12月07日 15時00分更新

文● 松岡美樹

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ネット系の技術革新には即応体制でのぞむ


 ではそんな同社はネット戦略についてどう考えているのだろうか? 根本氏はこう説明する。

「例えばコンテンツの作り方や運用法、技術などは、常に最先端で整えておく必要がありますね」

 インターネットを利用したサービスや機器は、技術革新のペースが速い。だからいつ何が起きても対応できるようにしておきたい、と言う。ただし紙の新聞に軸足を置きながら、である。

「活字離れといっても、新聞の購読者層はそう急には減らないだろうと考えています。ですから新聞の将来に対する危機感からネットに乗り出そう、という意識はありません。とはいえ一方、ITの分野では、今後何が起きるかがわからないのもまた事実です」

 例えば将来、まったく新しいテクノロジー、新しい端末が登場する可能性は当然ながらありえる。

「しかもその端末が安価で、とても使いやすく便利だとしますね。とすればわれわれは当然それに対応したい。つまり今後どんなことが起きてもフォローできるようにしておこう、というスタンスです」

「本業」は新聞でありながらも、紙だけをやっていたのでは急激な社会の変化に対応できない。だから平行してネット関連事業を手がけながら備えておこう、ということだ。

 ゆえに新聞本紙をメインに、ウェブはそれを補完する媒体と考え、両者を差別化している。

「例えば、YOMIURI ONLINEでは『ニュース速報を素早く読者に知ってもらおう』と。そのため記事の長さは新聞本紙より少し短くしてあります。また各種ポータルサイトに外販している記事は、それよりさらに短いです。こうして本紙の価値を損なわない形で、かつユーザーの利便性も確保できるやり方を取っています」



選挙速報はネットを使いリアルタイムで流す


 ではその中で、「ネットならでは」という意味ではどんな報道をしているのか?

「例えば選挙速報ですね。ネットでは、リアルタイムで当確などを出します。本紙の締め切りを待ってから出す、などということはしません。選挙報道については、YOMIURI ONLINEで速報するだけの価値がある、という認識です。ここで他社に遅れを取ると、ブランドイメージにもかかわりますから」

 もちろん選挙報道以外でも、ネットの速報性やウェブの特性を生かした報道をしている。

「従来なら、新聞の夕刊を作り終えたあとに起きた出来事は、翌日の朝刊までは報じられませんでした。ですが今ではそういうものもネットで配信します。また新聞本紙の記事に『詳細はYOMIURI ONLINEで』と入れておき、ウェブの方で詳しい記事を読めるような形も取っています」

 さてそんなYOMIURI ONLINEには、「発言小町」という人気沸騰のQ&A掲示板がある。そこで次回の後編では、「発言小町」の知られざる裏側やその誕生秘話などに迫ってみよう。


松岡美樹(まつおかみき)

新聞、出版社を経てフリーランスのライター。ブロードバンド・ニュースサイトの「RBB TODAY」や、アスキーなどに連載・寄稿している。著書に『ニッポンの挑戦 インターネットの夜明け』(RBB PRESS/オーム社)などがある。自身のブログ「すちゃらかな日常 松岡美樹」も運営している。

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