今年の受賞作の特徴は、メッセージ性とイノベーティブ
【レポート】Wii、クゥ、広島が受賞!! 「第11回文化庁メディア芸術祭」受賞作品発表
2007年12月05日 15時55分更新
各部門の受賞作品を一挙紹介――アニメーション部門、マンガ部門
<アニメーション部門>
【大賞】
- 河童のクゥと夏休み[劇場公開アニメーション]
原 恵一 - 構想20年、あたため続けた小暮正夫氏の児童文学原作を映像化した。2002年に同賞を受賞した「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」以来の監督作品となった。河童という郷愁を感じさせるものをテーマとしつつも、社会の問題点などを対置させ、ひとつの作品に創り上げた。
【優秀賞】
- うっかりペネロペ[TVアニメーション]
高木 淳(監督) - コアラのペネロペの日常を淡々と描いたフランスの絵本を原作にした作品。油絵のような手描きのキャラクターをCGで再現した。
- カフカ 田舎医者[短編アニメーション]
山村浩二 - 不条理小説と言われているカフカ作品をゆがみのあるタッチなどで、不条理で孤独な感じを描き出しているが、これはカフカなのか、山村ワールドなのか、不可分になっている。他の追随を許さない表現力だ。
- 天元突破グレンラガン[TVアニメーション]
今石 洋之(監督) - 1970年代の古典的なロボットアニメ。設定そのものは目新しくないが、現場が「本当に面白いロボットアニメは何か」を追求した、作り手の熱意が伝わってくる作品。
- 電脳コイル[TVアニメーション]
磯 光雄 - 近未来が舞台で、“電脳メガネ”が大流行している都市に引っ越してきた少女の周りで起こる不思議な出来事を描いた。アニメとしてはマニアックだが、子どものためのアニメとしてこなれた表現になっており、安心して見ることができる。
【奨励賞】
- ウシニチ[短編アニメーション]
一瀬 皓コ - 学生が制作したアートアニメ。鉛筆を使って、ほのぼのとしたかわいいタッチで描いた作品。独特の世界観が評価された。
<マンガ部門>【大賞】
- モリのアサガオ[ストーリーマンガ]
郷田 マモラ - 死刑囚と刑務官という、一般からすると取っ付きにくく、近寄りがたい物語だが、作者が誠実な態度で取材し、物語化している。地味なテーマだが、きちんと取り組んで作品化している。マンガの主題を拡張した点も評価の対象となった。
【優秀賞】
- 海街diary[ストーリーマンガ]
吉田秋生 - 突然、お父さんを亡くした三姉妹が、義理の妹をひきとって暮らして行く中に家族の絆を描いた。
- 鈴木先生[ストーリーマンガ]
武富健治 - 審査委員からは、中学の現場ってこんなに大変なのか、とため息も出た。Vシネマ的でもあるとの声もあった、先生の苦悩がある種過剰な程のストーリーになっている。先生が苦しめば苦しむほど読者は楽しいという。
- 竹光侍[ストーリーマンガ]
松本大洋/永福一成(作) - 腕が立つ侍が、業を断ち切ろうと真剣を竹光に変える。マンガが持つ絵の力を感じる作品。
- プライド[ストーリーマンガ]
一条ゆかり - 日本テレビ系列で放送中のドラマ「有閑倶楽部」で知られる一条ゆかり氏の作品。オペラ歌手を目指す主人公の「プライド」をかけた戦いを描いた人気が高い作品。
【奨励賞】
- 天顕祭[自主制作マンガ]
白井弓子 - 同人誌を出自とする作品で、優秀賞でもいいのではという声もあった。同人誌のレベルの高さを表していると言える。
<功労賞>
- 辻 真先(アニメ脚本家・ミステリー作家)
- テレビアニメの脚本家でミステリー小説も書いている。たくさんのジャンルのシナリオを書いてきた人物で、ある種の制約をストーリーによって乗り越えて行くという取り組みに、大きな貢献があった。