スマートフォン導入の契機
このような苦い経験から、携帯電話とPDAを兼ね備えたスマートフォンを購入する決意をした。いつでもどこでも、特に飛行機を待つむなしい時間に、スマートフォンで力いっぱい電子メールを読み書きするのだ。
前回、「Eudora」の受信ボックスが未読メールであふれかえる夢を見て明け方に目が覚めるという、電子メール中毒の弊害について書いたが、考えを変える(参考記事)。空港で何もせずにむなしく時間をつぶすよりは、1日200通を越えるメールの流れに翻弄されながらも、少しでもその流れに追いついたほうがいい。そのための、「常時オン」のプッシュ型メール機能を提供するスマートフォン購入の決意だ。
周囲からは、人生の大切な時間をこれ以上メールの処理に費やすのは単なるメールバカではないか、という批判の声も挙がったが、これにはあえて聞こえないふりをした。ビットのスピードに追いつくためには、これしかないと自分に言い聞かせて。
電子メールへの没入
とはいえ、スマートフォンの機種を選択するプロセスは、正直言って楽しかった。
比較検討した機種は、「BlackBerry Pearl」「Motorola Moto Q」「Nokia E62」「Palm Treo 700p」「Sidekick3」──の5モデル。
最終的にはBlackBerryを購入したが、システマティックに各機能を比較分析する、決定に至るまでのプロセスにワクワクした。コンピューターはMacしか考えられない筆者だが、今のところアップルはスマートフォンを作っていないため※、スマートフォンの購入選択肢は大きく広がる。機種選択にも頭を悩ませることになる。
※ 筆者が「BlackBerry Pearl」を購入した直後、2007年1月にアップルはスマートフォン「iPhone」を発表した。同年6月の米国発売を皮切りに、欧州を中心に世界展開をはじめたのはご存じのとおりだ。
MITメディア・ラボのメールサーバーに流れ込む電子メールの奔流をGmailのアカウントに転送して、BlackBerryで読む。Gmailに対応した電子メールソフトもインストールできるのだ。そして、「From」フィールドにメディア・ラボの電子メールアドレスを設定すれば、BlackBerryから返信しても、よほど注意深い相手でなければ気づかれない。シームレスにいつもの電子メールの世界に没入できる。
それまではMacの前に座り、Eudoraで新着メールを確認する時間があるときにしか決して追いつけなかったビットのスピードに、スマートフォンのおかげでどうにか「いつでもどこでも」追いつけるようになった。
(次ページに続く)
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