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KDDI・マイクロソフト連合の参入でさらに過熱化するSaaS市場

2007年11月30日 23時27分更新

文● アスキービジネス編集部

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11月29日、2日目を迎えた「SaaS World 2007」(主催・IDGジャパン)では、KDDIやマイクロソフト、ネットスイートなどの基調講演が行なわれ、SaaSビジネスの現状と将来の可能性について各社がそれぞれ見解を述べた。


中立路線を狙うKDDI&マイクロソフトのSaaSプラットフォーム


 立ち見が出るほどの盛況ぶりで、SaaSに対する業界の関心の高さがうかがえた「SaaS World 2007」。KDDIとマイクロソフトの共同基調講演では、両社が手がけるSaaS事業「Business Port」の詳細が発表された。「我々が日本の企業ユーザーにふさわしい新たなSaaSプラットフォームを実現する」とKDDI ソリューション事業統轄本部 戦略企画部長 桑原康明氏は強調する。

KDDI ソリューション事業統轄本部 戦略企画部長 桑原康明氏

KDDI ソリューション事業統轄本部 戦略企画部長 桑原康明氏

KDDI ソリューション事業統轄本部 戦略企画部長 桑原康明氏

 Business Portは、マイクロソフトが提供するサービスプラットフォーム構築ツール「Connected Services Framework」(以下、CSF)をベースに開発されている。CSFはSaaSプラットフォームに欠かせない複数のWebサービスの連携を実現し、課金処理やユーザー管理などの機能を持つ。

 マイクロソフト 業務執行役員 通信・メディアインダストリー統括本部長 山賀裕二氏によると「英ブリティッシュテレコムはCSFをベースとしたSaaS事業を始めたことで、ビジネス構造の転換に成功した」と述べる。「過去3年でブリティッシュテレコムは総売上を伸ばしつつ、電話事業の売上構成比が8割から2割になった。事業の柱は外部のアプリケーション・ベンダーのソフトを企業ユーザーに提供するSaaSサービス。CSFはソフトウェア会社が参画しやすいプラットフォームを構築できる」と山賀氏は自信を見せる。

マイクロソフト 業務執行役員 通信・メディアインダストリー統括本部長 山賀裕二氏

マイクロソフト 業務執行役員 通信・メディアインダストリー統括本部長 山賀裕二氏

マイクロソフト 業務執行役員 通信・メディアインダストリー統括本部長 山賀裕二氏

 SaaS市場のトップを走るSalesforceはSFAをコア・アプリケーションとして提供しながら、他ベンダーのERPや会計ソフトなどもアドオンとして使うことができる。この点について、KDDIは「外部のベンダーはSalesforceに合わせたソフトウェア開発が必須であるし、競合するSFAベンダーとは相容れないプラットフォーム」と主張する。

 一方、Business Portは核となるアプリケーションを持たない戦略で、幅広いアプリケーション・ベンダーの獲得を狙う。「特定の縛りがないBusiness Portのプラットフォームなら多種多様なサービスを集めることができ、企業ユーザーが自分達に一番マッチしたSFAや会計ソフトを選択できる」と桑原氏は強調する。

「選ばれるSaaSプラットフォームとなるためにはユーザーに多様な選択肢を提供することが大切。魅力的なアプリケーションを迅速に拡充していくためにマイクロソフトのノウハウが役立つ」(桑原氏)

 Business Portではパートナー企業のSaaSアプリケーションの開発負担を減らすため「Business Port Support Program」という支援サービスを提供する。このサポートプログラムについて「価格設定のアドバイスからSaaS接続のための検証設備の準備まで、全般のサポートを行なっていく。我々のサポートノウハウでパートナー企業のSaaS参入を促す」と山賀氏は述べる。

「Business Port」ではビジネスモデル、アプリケーションデザインからマーケティングまでマイクロソフトがサポートする(画面クリックで拡大)

「Business Port」ではビジネスモデル、アプリケーションデザインからマーケティングまでマイクロソフトがサポートする(画面クリックで拡大)

 2008年3月にはBusiness Portの第1弾アプリケーションが登場する。マイクロソフトのコラボレーションツール「Outlook」を月額980円でSaaS形式で提供する「KDDI Business Outlook」がそれだ。また、企業に人気の高い会計ソフトのOBCや、SFAのソフトブレーンなど外部アプリケーション・ベンダーの参入も現時点で数社決定している。来年はSaaSプラットフォームの主導権争いがますます加熱していくようだ。

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