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【短期集中連載】新聞はネットに飲み込まれるか? 第7回

「紙とネットの融合」にトライする日本経済新聞社(前編)

2007年11月29日 13時00分更新

文● 松岡美樹

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独自調査の要約は新聞より速く出す


 日経ではさまざまな調査を実施しているが、これらも要約の形で新聞より先にウェブに出す。

「定期的に行なっている小売業調査など、日経の独自調査の要約は新聞より速く出します。ただし、NIKKEI NETでは、長い記事は全文を出していません。そのほうが読者は素早く的確に情報を入手できるだろう、という考え方です」(藤野氏)

 見やすくコンパクトに情報を提供する、というのもひとつの考え方だ。もちろん新聞本紙との兼ね合いを考えた上でのことである。

「日本経済新聞の場合、ほかの一般紙とくらべてコンテンツ、情報量が多い。読者から見ると、『あんなに一日中、新聞を読んでいられませんよ』というくらいのものです(笑)。ですからそのうちのエッセンスをウェブで出す、という感覚ですね」(斉藤氏)



新聞を「食わない」ウェブの記事構成


 では一方、紙の新聞には出すが、ウェブには出さない記事とはどんなものか?

「新聞本紙には、自社独自の記事がたくさんあります。こうした独自記事をネットにあまり先出ししてしまうと、(それを元に追加取材などをされて)他社さんに追いかけられてしまう。ですからこのあたりは記事の内容によります

 『NIKKEI NET』は課金モデルではなく、広告モデルで運営しています。日経新聞を買っている読者にしてみれば、ネットに同じ記事が先に出てしまうと、もう新聞を買う必要がなくなってしまう。そういうことがないよう、記事の選別には配慮しています」(藤野氏)

「記者をゼロから自社で育てることも含め、取材をするにはかなりのコストがかかります。その結果として生まれる記事を、無料で出すのはいかがなものかとわれわれは考えています。このあたりのコストの問題は、読者の方にもご理解いただきたいと思います。言い換えるなら、ウェブのほうを追えば最低限のことはつかめるようになっている、ということです」(斉藤氏)

 ウェブ媒体の収益モデルと、紙の新聞との兼ね合い。このあたりは新聞社にとって難しい問題だ。

 さて日本経済新聞社では新しいウェブ媒体を使い、「紙とネットの融合」にもチャレンジしている。後編ではその試みを紹介しよう。


松岡美樹(まつおかみき)

新聞、出版社を経てフリーランスのライター。ブロードバンド・ニュースサイトの「RBB TODAY」や、アスキーなどに連載・寄稿している。著書に『ニッポンの挑戦 インターネットの夜明け』(RBB PRESS/オーム社)などがある。自身のブログ「すちゃらかな日常 松岡美樹」も運営している。

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