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【徹底研究 SaaS最前線】

SaaS・ASPがIT政策の新キーワードに――政府が模索するブロードバンドの「次」Part4

2007年11月22日 17時30分更新

文● 文●アスキービジネス編集部

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中小企業経営におけるIT活用状況は長らく足踏みに等しい状況が続いていたが、料金がリーズナブルなら「使ってみる」という気にさせることも不可能ではない。SaaS・ASPは経営に役立つITの価値に気付いてもらうための入り口でもある。


「高い」「わからない」「使えない」――“ITの壁”をSaaS・ASPが突き崩す


「国民の生産性向上」という国の目標達成を支援するIT政策の具現化について、ICT(情報通信技術ならびに情報通信基盤)という「手段」からアプローチする総務省に対し、経済産業省は産業、企業経営、業種・業態といった経済活動そのものからSaaS・ASPにアプローチしようとする。

 経済産業省にとってのSaaS・ASPとは、ひとつは産業育成の対象となる有望な新分野であり、もうひとつは企業経営、特に日本経済の7割を担う中小企業が経営にITを活用し、生産性の向上を達成するための突破口だ。

 ここでは政府が「経済財政改革の基本方針2007」で示した方針に沿い、中小企業やサービス業を対象としたSaaS・ASP利用促進策の動向を整理しておきたい。というのも、IT活用の進まない上記グループの「実態」調査をもとにしてASP・SaaSの有効性を経済産業省が検討し、施策を練っているからだ。

●経済産業政策の重点(平成20年度)※予算は2007年8月時点での要求額

出典=「平成20年度 経済産業政策の重点」(経済産業省・平成19年8月)

出典=「平成20年度 経済産業政策の重点」(経済産業省・平成19年8月)

 実際、企業のIT活用促進策に関する報告書や資料を同省は数多く作成しており、SaaS・ASPについては政府の方針を反映した「経済成長戦略大綱」(平成19年6月改定)に続き「平成20年度 経済産業政策の重点」(平成19年8月)でも利用促進が明言されている。

 その具体的な施策に触れる前に、それほどまでに中小企業やサービス業のIT活用が進まない理由を把握しておくと以降の話が早くなる。

 同省の報告書「中小企業のIT化の現状と課題及び対応の方向性について」(平成19年6月4日)によれば、問題点は4つに集約される。「戦略の不足」「資金の不足」「人材の不足」「外的要因」だ。最初の3つをまとめて翻訳すれば「何に使えるのかわからないし、使いこなせる社員もいないものに高い金は払いたくない」になる。4つ目は、画一的ではない中小企業のニーズを的確に満たすソフトウェアやシステムがない、という問題だ。

●中小企業向けSaaS・ASPに期待される役割

 アプリケーションの種類や数がそろうのは今後の市場の伸び次第という面は確かにあるものの、こういった課題はSaaS・ASPモデルの普及により、大部分が解消可能になる。

 このSaaS・ASPのアドバンテージを前提として同省が進める利用促進策は、現在のところ総務省の施策と重なる部分も多い。基本的には企業が安心して利用するためのルール作りを第1段階としているからだ。列挙すると①サービスレベル確保のためのベンダー・ユーザ間のルール整備②SaaS・ASPシステムの信頼性、安全性向上のためのルール整備③SaaS・ASPの標準化・共通化④ベンダー間のルール整備、となっている。特に①は重要で、システムの可用性やセキュリティ対策を保証するSLA(サービスレベル契約)のガイドライン化を同省は目指すとしている。

 そのほかに検討中の施策としては、中小企業向けに特化したSaaS・ASPプラットフォームの展開支援、企業向けSaaS・ASPのトレーニングプログラムの実施、さらに企業間電子商取引(EDI)のための標準化などが挙がっている。中小企業やサービス業の「生の声」を知り尽くす強みを生かし、企業実態と整合する促進策を多角的に検討していく役割を同省の施策には期待したい。

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