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【徹底研究 SaaS最前線】

SaaS・ASPがIT政策の新キーワードに――政府が模索するブロードバンドの「次」Part3

2007年11月21日 17時30分更新

文● 文●アスキービジネス編集部

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IT政策の実現に向けて動く省庁の中でも総務省の動きは活発だ。「e-Japan戦略」達成後の「IT」を「ICT」に変え、情報通信網による社会基盤、産業基盤の創出に次々と新構想を加えている。


ブロードバンド上に築け! 第2、第3のインフラ


 政府の「e-Japan戦略」を受けた情報通信政策を一手に担ってきた総務省は現在「u-Japan」を施策のスローガンに掲げている。一応の成果を見た情報通信網の整備から一歩次の段階へ進み、ユビキタス社会(いつ、どこで、だれでもITの恩恵にあずかれる社会)を実現するための新しい社会基盤作りを提唱しているのだ。ユビキタス社会ではおもにネットワークを介したオンデマンド型のアプリケーションの利用が想定されるため、当然のことながらSaaS・ASPは既に総務省の施策が深くかかわる対象となっている。

 しかしながら政府のIT戦略本部が示した「重点計画2007」のうち、総務省の担当する施策はもっとも広範にわたるものの、SaaS・ASPの利用促進策については同時に経済産業省も担当に任じられている(現時点ではIT化の水準が低いと見なされる中小企業やサービス業の底上げがSaaS・ASP利用促進の目的と位置づけられているため)。そこで(ユビキタス)社会や経済活動になくてはならない情報通信基盤の一部という解釈に基づき、SaaS・ASPを政策に取り込んでいく構えのようだ。

 では実際にSaaS・ASPをどう政策に落とし込んでいるのかを見ていくが、その前に一つ注釈しておきたいのが「ICT」という用語だ。2001年の「e-Japan戦略」から続く政府の計画や方針では「IT」(Information Technology:情報技術)がもっぱら使用されている。いっぽう総務省は2005年頃よりほぼ同じ意味で「ICT」(Information and Communication Technology:情報通信技術)という用語を意識的に使用するようになっている。国際的な風潮に合わせたことも理由なのだろうが、「情報技術」と「通信技術」(CommunicationTechnology)はもはや不可分の場合が多く、その両面から政策に臨むという態度の表明でもあろう。

 その意味でSaaS・ASPはまさに「ICT」といえる。まずは来年度のICT政策をまとめた「平成20年度ICT政策大綱」(以下「大綱」と略)のSaaS・ASPの扱いを利用促進の施策に絞って見てみよう。

 大綱ではまずICT政策の大テーマ「生産性向上と国際競争力の強化」が述べられているが、これは前述した政府の「成長力加速プログラム」に適ったものだ。したがって大綱でも「ASP・SaaSの普及促進のための環境整備」という一項が明記されている。ここで示唆された具体策は、SaaS・ASPの安全性・信頼性を保証するための指針作りや事業者認定制度、ASP接続のためのインターフェース公開など。特に安全性の水準をどう設定するかは重要な検討項目だ。顧客リストや会計データなどの重要なデータを社外の事業者に預ける形となるSaaS・ASPでは、安全性の担保が必ず議論されることから、普及を推進する以上、まず行政がなんらかの対策を講じておこうという判断が見て取れる。

●企業の競争力を高めるためのICTのあり方(総務省)

出典=「平成20年度 ICT政策大綱」(総務省・平成19年8月)
出典=「平成20年度 ICT政策大綱」(総務省・平成19年8月)

 安全対策のほかに目を引く施策は「電子タグ」※ 1や「標準コード」※ 2の整備を同時に上げている点だろう。これらをSaaS・ASPと組み合わせる、つまりブロードバンドの上に第2、第3のインフラを加えた「生産性向上のためのICT共通基盤」(図上)として構築すれば、既存システムとの接続コストが抑えられ、企業のICT投資負担を軽くできるという案が示されているのだ。

 なお、総務省はASPIC Japan(特定非常利活動法人ASPインダストリ・コンソーシアム・ジャパン)と共同で「ASP・SaaS普及促進委員会」も組織している。「安全性・信頼性」「ASP連携」「企業ディレクトリ」「国際連携」の4テーマからなる委員会を設け、今後の普及に向けて課題の解消や施策の具体化をさらに進めていく予定だ。

●「生産性向上のためのICT共通基盤」がICT投資を圧縮する

出典=「平成20年度 ICT政策大綱」(総務省・平成19年8月)
出典=「平成20年度 ICT政策大綱」(総務省・平成19年8月)

※ 1「電子タグ」…ICチップと無線を組み合わせたバーコードに代わる次世代の認証・識別技術。

※ 2「標準コード」…企業間の電子商取引(EDI)などで用いられる商品コードや受発注データの形式を共通化したコード体系。

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