このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

エンジニア・インタビュー 第2回

開発者とは“やったもの勝ち”  NTTデータのOSS「Hinemos」

2007年11月22日 11時48分更新

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

コミュニティでの意見交換でWindows対応問題が解決

 Hinemosの監視対象は当初、Linuxのみの対応であった。だが、その2年の中で、大上さんがHinemosのビジネス展開を考えて営業的な動きをしていたとき、「Windowsに対応していないので、導入は難しい」という声を聞いたという。中には、パートナーとしてビジネス展開が期待された企業もあったが、最終的にWindows非対応がネックになったところもあったそうだ。そこで、「HinemosはWindowsにも対応しなければならない」と決意を固め改良を進めたという。そしてVer2.1でWindowsに対応、Ver.2.3では、Linuxと同様の機能を提供できるようになった。

「Windowsへの対応化を進めようとしたところ、すぐに問題が浮上しました。使用していたいくつかのオープンソースが、Windowsでは使えないことが判明したのです。一例をあげると、性能値を取得するSNMPエージェント(注1)と呼ばれるプログラム。これについては、Windows標準のSNMPエージェントが備えている拡張機能を利用することで、必要な値が取得できるように対処しました。また、ほかにも解決に悩むことが多々ありますが、その際も開発者のコミュニティに参加するなどして解決への工夫をしました。コミュニティでは、詳しい専門家がいるので、その人からアドバイスを受けることができます。ダイレクトにソースを見ている人たちと話しができるのでより、突っ込んだ話ができますしね」

注1:SNMPエージェント
SNMP(Simple Network Management Protocol)はネットワークを監視するプログラム。SNMPで管理されるルータやスイッチといったネットワーク機器には、SNMPエージェントが動作する。

Hinemosのビジネス展開には、ビジネスを考慮した開発が必要

 大上さんはHinemosのスタート時は実装者としての立場であったが、現在では開発リーダーとしてHinemosの進化に力を注いでいる。その仕事スタイルは、Hinemosの最初のリーダー、そして次のリーダーたちからの影響が大きいと言う。Hinemosプロジェクトへの参加は、大上さんにとって「ビジネスを考えられるエンジニア」へのステップになったという。

「自分がメンバーだった頃から、プロジェクトマネージャはさまざまな業務を任せてくれていました。たとえ失敗しても責められることはありませんでした。今後のHinemosプロジェクトでも、有効だと考えられることは積極的にやっていき、メンバーにもやらせたいと考えています。そのためには『成否関係なく、やった人が評価される業務システム』を作ることが大切。そうしないとアクティブな仕事はできないですからね。目指すのは『やった者勝ちの組織』です。もう1つは、ビジネスを意識した開発をもっと考えていくことです。たとえば、10%のコストでできる完成度90%の成果物と、30%のコストでできる完成度100%の成果物を両天秤に載せたとき、ビジネスを考えると前者の方が価値が高い場合もあるということです」

NTTデータ

 Hinemosは、OSSとして積極的にビジネス展開を視野に入れている。基本のHinemosをベースに、ユーザーの意向にあった機能を付加したり、独自の機能を追加しそれをパッケージとして販売もできる。今はまだ数は少ないがパートナーとして開発をしている企業もある。そうしてHinemosのビジネスとしての広がりと、同時に広くユーザーへの浸透を狙っているという。

「かつては研究者としての視点だけでしたが、Hinemosに関わるようになり、そしてリーダーとなってからはユーザーやビジネスという視点が加わりました。特に今は技術者の枠にとらわれないでビジネスとしても成功したいと考えています。ただ創ることだけでなく、ユーザーの視点、コストの面、その上で良質なテクノロジーを展開していくのが私たちのミッションであると今は強く思っています」

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ