「東京の街はとんがったほうが面白いし、深みを増す」
でも、妹尾氏は秋葉原より銀座の方が好きだとおっしゃっていましたね?
「もちろん、アキバは大好きです。でもアキバ『しか』ないヤツはどうかな? ということです。今日は銀座、明日はアキバ、週末はじっくりと神保町で本を選ぶ、というのが東京のような巨大な『メガロポリス』の楽しみ方だと思うんです」
妹尾氏は「メガロポリス多様化」という言葉で表現する。
テクノ都心・秋葉原、ビジネス都心・丸の内、文化都心・六本木、ファッション都心・表参道、高級ショッピング都心・銀座──。それぞれの街の個性を尖がらせる「タウン特化」を行なうことで、街は面白く、かつ深みを増すという考えだ。
「本屋で例えると、中小の本屋ばかりだったら、売れ筋の1、2位ばかり置かれていて、どこに行っても3、4位以下を買えない。それがある分野だけ特化した本屋があれば、その分野は15位まで置いてあって、ほかと違う本が手に入るわけです。だから僕らはアキバが面白いし、神保町も好き」
秋葉原が便利で面白くて人気があるからと、むやみにオフィスビルばかりを建ててしまうと、大手町と同じになって秋葉原のよさが薄まってしまう。街づくりには、構想が大切だというわけだ。
「プロデュースに重要なのは、きちんと構想して、コンセプトをまとめて人に理解してもらうことなんです。インパクトのあるキャッチーな言葉をそこに付け加えることも大切」
例えば、アキバが絡むキャッチフレーズでは、「AAライン」(アキバ/アサクサ)、「ABライン」(アキバ/ビックサイト)、「ACライン」(アキバサイクル周遊)、「ADライン」(アキバ/ディズニーランド)といった具合だ。
「キャッチコピーは面白いもので、何度も言い続けているうちに頭に浸みて、ふと別の要因とつながって新しい構想が生まれることもある」という超プラス思考に脱帽だ。
「街の人が評価してくれたときは、本当にうれしい」
ところで妹尾氏が、街のプロデュースという仕事をやっててよかったと思うときはいつなんだろう?
「全体を通して見ると面白いときもあるけど、事が上手く運ばなくてフラストレーションがたまることも少なくない。でも、僕らが本気で仕掛けたことを、街の人が評価してくれたときは本当にうれしい。あとは、『ロボット運動会』のようなイベントをやったときに『来年はいつやるんですか?』と聞かれたりするのも励みになります」
新書「アキバをプロデュース」は、そんな構想プロデュースやコンセプトワークにかかわる人に向けて書かれた内容だ。
「そのほか、アキバが大好きな人、街づくりを考えている人、それからテクノロジーの政策立案をする人にもぜひ読んでほしい」
秋葉原の再開発物語だけに終わらず、街づくりを題材にしたプロデューサー論的な読み取り方や、技術を事業化するアイデアの元という読み取り方もできるというわけだ。
「スタッフ募集したいんだけど……」
突然ですが、妹尾氏の要望により、この場で妹尾氏が理事長を務める「NPO産学連携推進機構」のスタッフを募集を告知する。今回の話に関連する事業を担当することになる予定なので、われこそは、と思う人はぜひ応募してみてはいかがだろう。募集する職種は以下の3つだ。
「NPO産学連携推進機構」スタッフ募集
- 街作り関連。アキバ再開発のような、街づくり全般のプロデュース
- イベント関連。「ロボット運動会」のようなイベントを自分も面白がり、かつきちんと組み立てられる人
- ニュービジネス関連。妹尾先生曰く「アキバでこれはウケるぞと思うことをやります。内容は極秘」という事業を一緒にやりたい人
- 社会人教育のスタッフ
応募は、簡単な略歴と志望動機、「アスキーを見た」と書いて下記メールアドレスまで。ちなみに「秋葉原テクノタウン構想」を進める「スポンサーも熱烈募集中」とのことだ。

妹尾堅一郎氏プロフィール
1953年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、富士写真フィルム(当時)入社。英国国立ランカスター大学経営大学院博士課程終了。慶應義塾大学、東京大学などを経て、現在は東京大学 国際・産業共同研究センター客員教授、NPO産学連携推進機構理事長など。著書に「グリッド時代」(共著・アスキー)、「研究計画書の考え方」(ダイヤモンド社)、「雷文化論」(慶應義塾大学出版会)など。
新刊「アキバをプロデュース」は、秋葉原駅前再開発プロジェクトにかかわった数年間(サブタイトルには「5年」とあるが、本人は「7年だよ」とのこと)の軌跡が記されている。

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