このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 5 次へ

斉藤博貴の“タイ鉄道写真紀行” 最終回

タイを走る日本製蒸気機関車の雄姿

2007年11月14日 09時00分更新

文● 斉藤博貴

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

17:30――二度目のシャッターチャンス


アユッタヤー駅。オリエンタル・エクスプレスも停車する駅だが、華やかさに欠ける。しかし、だからこそ蒸機牽引列車が停車して似合う良さがあるというものだ

 タクシーとバスで、蒸機を追っかけてバンコクからアユッタヤーまでやって来た。バンサイ駅~アユッタヤー駅間の線路近くで、タイ人の真似をしてストローでペッシー・メークッ(ペプシMAXのタイ語名)を飲みながら北の空を眺めている。夕暮れ時に発車する復路の記念列車を撮影するカメラとレンズは、いつもの「E-510」と「Zuiko Digital ED50-200mm F2.8-3.5」だが、今回は初めて×1.4のテレコンを使用した。これで実効焦点距離は35mm判換算で560mm相当だ。

 鉄橋の向こうに、黒煙が上がり始めたのが分かった。そろそろカメラのファインダーの中に入ってきてくれるということだ。あらかじめシャッターボタンを半押しして、うたた寝中のE-510を現実に引き戻した。デジタルカメラというものはスリープからの目覚めが悪いことがまれにあるので、撮影寸前にちゃんと起こしてやった方がいい。

歩道橋から撮影した蒸機

【作例】ドンムアン駅近くの歩道橋から撮影。木の枝が茂りすぎて真正面からしか撮れなかった。煙の形がキレイ。使用機材:「E-510」+「Zuiko Digital ED50-200mm F2.8-3.5」(F4 1/500秒 ISO 200 AWB 焦点距離は35mmフィルム換算で200mm相当)

 蒸機が来た。蒸機を見た。蒸機を撮った。撮影はあっけなく終了。でもちょっとフレーミングが甘かった。蒸機がディーゼル機関車より一回り小さいことを忘れていた! ははは。デジタルカメラの場合、露出やピントはいくらでも確認できるから……先にディーゼル機関車牽引列車で試写して安心しきっていたのが失敗の原因だ。まあ、画竜点睛は逃したけれど、このあたりは今後の課題ということで。

超望遠撮影した記念列車

【作例】ミカドのSRT953番を先頭に、記念列車はバンコクを目指して復路を走る。超望遠撮影なので、かなり圧縮効果が出ている。撮ってみると何か思っていたのと印象が違った。使用機材:「E-510」+「Zuiko Digital ED50-200mm F2.8-3.5」+テレコン×1.4併用(F4.9 1/250秒 ISO 400 AWB 焦点距離は35mmフィルム換算で560mm相当)

タイ鉄道のうんちく(2)

蒸機の理想の撮影ポイントは、激しく黒煙をはき出す力業区間。特に煙の出づらいオイル・バーニング式の戦後組を撮影する場合、勾配区間の登り、またはカーブ後の加速区間が望ましい。なお、年間を通じて気温が高いタイでは、日本で見られるような純白の蒸気煙は期待できない点もお忘れなく。



最後に


 さて、この6回目で連載の原稿もすべて終わった。そろそろ次の目的地のインドへ旅立つことにする。ヒマラヤ山脈の外縁を走る世界遺産「ダージリン・ヒマラヤン鉄道」に乗車するためだ。一年ぶりのトイ・トレインは元気だろうか? 今年になって時刻表の大幅な改正や増便が行われたそうなので、かなり楽しめそうな気がする。それじゃ!

 あ、忘れてた。最後に、何の役にも立たない鉄道タイ語講座。タイ語で蒸気機関車は「ロットチャク・アイ・ナーム」。ロットチャクは機関車、アイ・ナームは気化した水(蒸気)を意味する。


著者近影 斉藤さん

筆者紹介─斉藤博貴(さいとう ひろたか)


執筆から編集までこなす鉄道系カメラマン。タイとカンボジアの鉄道を調査するために1996年より約5年間バンコクに滞在した。特技は英語とタイ語で、ライフワークは海外鉄道の撮影。最近では世界遺産として登録されたインドの「ダージリン・ヒマラヤン鉄道」と「ニルギリ登山鉄道」に通うようになった。著書に「技術のしくみからデザインまですべて分かる鉄道 (雑学を超えた教養シリーズ) 」(誠文堂新光社)がある。



前へ 1 2 3 4 5 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ