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「カメラ雑誌でテレビの特集があってもいい」──ソニー開発者に聞く、ブラビアの静止画機能

2007年11月22日 12時00分更新

文● 畑田明信

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カードスロットがあるだけじゃ、静止画対応とは言えない


 さて、この秋店頭に並んでいるX5000/W5000/V5000シリーズのブラビア では、通常の動画表示用モードとは別に、4種類もの静止画表示用モードが用意されている。

 今回、担当者に話を聞いてみたところ、ソニーとして真正面から「写真の表示がどうあるべきか」に向き合って、この機能を開発したことが感じられた。実機の画面を観た印象としても、一眼レフカメラを使って、自分なりの表現を取り入れた写真を大きく引き伸ばして「見たい」「見せたい」という要求には、充分応えられそうなレベルの高さを確保していると納得した。

ブラビアのフォト画質モード
フォト
ダイナミック
他画質モードと比べて、エンハンス量(画像処理による最適化)を上げ、高画質感が得られる
フォト
スタンダード
通常の家庭視聴を考慮したモードで、静止画像全般に対して、バランスの取れた画質得られる
フォト
カスタム
画像編集などを考慮した、画作りオフモード
フォト プリント写真の鑑賞をイメージしたモード。エンハンス処理は控えめ

 ただし、実際に利用するシーンを考えたとき、いくつか気になる面もあった。ホワイトバランスのデフォルトの設定が、なぜかD65※1(4つある静止画モードのうち、カスタムとフォトの場合、ダイナミックとスタンダードは動画と同じ画作り)に設定されていたり、色空間の選択肢が「sRGB」「sYCC」「Adobe RGB」の3種類※2であったりする点だ。これは、写真というより止まった動画を表示することを意識して、仕様を決めたのではないかという印象を与える。

画作り

色空間の設定によって、エンハンス処理も変更される。色空間の狭いsRGB(左)ではテレビ内のエンジンで色域を広げる処理が入る。一方、色空間の広いsYCCやAdobe RGBでは、テレビ内での強調を抑え、より入力された信号に近い形で表示される

 しかし、このような機能を搭載した製品を世に問うのは初めてということもあって、ソニーとしても、この仕様が絶対という訳ではなく、ユーザーの声を聞きながら、今後も改良を加えていきたいということであった。

※1 D光(デイライト)は昼間の光に近い標準的なバランスの光源を示す。D65は、D光のうち色温度が6500Kのものを指す。色温度とはディスプレーのホワイトバランスや照明の色あいなどを決めるファクター。低い数字では赤みを帯びた色合いになり、6500Kあたりで黄色、9000K以上では青白くなっていく。詳しくは色彩関連のJISハンドブックなどを参照してほしい。

 ちなみに、美術館などで、美術品を鑑賞する環境は今でも白熱電球(A光、約2856K)が基準だし、D光でも写真の評価に使われる光源の色温度は約5500K(D55)だったりする。正直なところ、写真を見せたいというセンスで、D光の約6500Kは出てこないだろうと筆者は思う。デフォルト設定の変更や設定項目の追加など、検討すべき部分があるのではないか

※2 「sRGB」「sYCC」はともにディスプレーデバイスなどで、表示できる色の範囲(色空間)や信号などに関連する規格。



次に期待したいのは、縦置き?


 取材の中でソニーの技術者は製品の発表後ディスプレーを「縦置きで使いたい」という要望が多くあったと話していた。

津村氏

津村氏はデフォルトの色温度に関して「今回は教科書どおりにD65を採用したが、ユーザーの声を聞きながら、最適な解答を考えていきたい」と話していた

 確かに言われてみれば、写真を撮る時に縦長の構図を使うことは多い。縦置きのスタンドなどを用意すれば、縦長表示にも対応できるのではないかと期待したのであるが、残念ながら、放熱機構の問題などから、現状の製品を縦長の向きに設置して利用することはできないとのことであった(良い子の皆さんはしないでね……ということか、残念)。

 しかし、私も「縦置きのブラビア」はぜひとも欲しいと思った。縦横を回転させながら使うのは、流石に大変かも知れないが、設置する台によって、縦置き、横置きが選べる程度の選択肢はぜひ、次世代機に搭載してもらいたいものだ。もうひとつ、現在販売されているハイビジョンテレビの縦横比は通常16:9になるのも注意したい部分だろう(コンパクトデジカメは4:3、一眼レフ機は3:2の場合が多い)。

 構図の問題は、写真を撮る側には重大なポイントとなるのだが、逆にいえば、縦置きにできないとか、縦横比が16:9であるとかいう点が問題にならないと感じるなら、ブラビア プレミアムフォトモードは大変魅力的だ。「α700」など、ソニー製のカメラとの組み合わせであれば、カメラ側とテレビ側のHDMI端子にケーブルを接続した時点で、自動的に画面の表示モードが切り替わるなど、操作の利便性も考慮されている。

 デジタルカメラのユーザー(特にデジタル一眼レフのユーザー)なら、一度体験してみて損はない機能に思える。

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