マイクロソフト(株)は9日、東京都内で記者説明会を開き、シニア層によるICT(Internet Communication Technology)の利活用を推進する施策「アクティブシニア推進計画」を発表した。
同社によるシニア層向けの活動は社会貢献活動のひとつに位置づけられている。活動内容には、いわゆる「デジタルデバイド」の解消を目指した日本独自の活動「UP―デジタルインクルージョンの推進」があり、今回発表されたアクティブシニア推進計画は、そのテーマのひとつとなる。なお“デジタルインクルージョンの推進”ではほかにも、子供向け教育でのIT活用、地域経済の核である中小企業支援、行政サービスの電子化などもテーマに挙げられている。
説明会で会見を行なった米マイクロソフト社 CEOのスティーブ・バルマー(Steve Ballmer)氏は、シニア層にICTの活用を広める意義について述べた。バルマー氏は「入手しやすいテクノロジーをあらゆる層に提供することが、(社会の)持続的な成長に必要」「テクノロジーの革命に、シニア層も参加できるように」などと述べて、シニア層にも使いやすい技術を提供することで、ITによる恩恵を幅広い層に届ける必要性を説いた。また、自身の父親が難聴で、その父がPC上でのチェスを通じてコミュニケーションを広げていることなどを披露。シニア層のコミュニケーションを広げる道具としてのIT、といった側面を強調した。
お詫びと訂正:掲載当初、スティーブ・バルマー氏の英字表記に誤記がありました。ここに訂正するとともに、お詫びいたします。(2007年11月15日)
説明会では、同社がこれまでに行なってきたシニア層向けの取り組みについても披露された。しかし同社執行役 専務 デジタルライフスタイル推進・OEM担当の真柄泰利氏は、従来の活動は「ともすると個別の施策で、全体感がなかった」と振り返った。また、シニア層に対して直接の接点を多く持つ企業ではないという問題点を超えていくためにも、接点を持つパートナー・アドバイザーとの協力の必要性を挙げた。
これらの問題点を踏まえて構築された今回の推進計画では、シニア層のICT利活用促進という大きな目的を踏まえて、6つの軸を中心にさまざまな施策を行なう。主な内容としては、イベントやICTに関するスクール、NPOや自治体等への情報提供や環境整備支援(ソフトウェアの提供などを含む)、シニア向けのポータルサイト構築などが挙げられている。
ポータルサイトとしては、「シニアポータル よつば倶楽部」(下記関連URL参照)が本日よりスタートしている。また、同社が運営するパソコンに関するQ&Aサイト「答えてねっと」と連携し、シニア層が疑問を調べたり質問をしたりするのに役立つWindows Vista用ガジェットも披露された。
アドバイザーとの協力については、アドバイザー組織として「アドバイザリボード」を設立。ボードメンバーにより、計画のコンセプト立案や活動への提言、実施した施策の検証・評価などを行なってもらうという。
8名のメンバーには関連するNPOの代表や大学教授などが選ばれており、いわゆるPC業界からの参加はあえてない。やや異色なところでは、テレビ通販でお馴染みの(株)ジャパネットたかたの代表取締役 高田明氏も名を連ねている。
ゲストとして登壇した高田氏は、「59歳になり、物を通してどれだけ人の幸せにつながっていくのだろうということを考えるようになった」と述べ、自身が好むカラオケマイクやデジタルカメラの例を挙げて、「ITはお年寄りのための商品でもある」として、シニア層にIT活用を広める必要性を説いた。また、その方向性として高田氏は、1から10までやさしく教えることよりも、自分で学ぶきっかけを与えることを重視すべきであるという考えを示した。
もう1人のゲストとして、同じくボードメンバーでNPO「笑集会」の代表を務める、コメディアンの若井ぼん氏もスピーチを行なった。若井氏は、自分が半年間佐渡島に住み込んでお年寄りに笑いを届けるかたわら、四苦八苦しながらパソコンやインターネットを活用して情報発信とコミュニケーションに取り組んだ経験をユーモラスに紹介。自らの体験を生かして役立ちたいとの抱負を述べた。