海外は自分で歩かなくちゃダメ
さて、アスキー的にはIT関連の話題が気になるところだが、浅井氏には日本人とITの関係はどう見えるのだろう?
「ITは、要するに情報を伝え合うことでしょ。基本はコミュニケーションなんですよね。『face to face』のコミュニケーションが苦手な日本人のITの特徴が、先に出たブログの使い方だと思います」
独り言や文句をつぶやいて、うっぷんを晴らす私的公開日記が、日本人のITの特徴ですか。
「それにIT界は英語の世界だから、英語に弱い日本人にとっては大変でしょう」
確かにIT企業は米国発のものが多いし、用語を日本語表記にしたところでカタカナがあふれて煩雑だ。IT分野を制するには、英語を制するのが近道なのかもしれない。ところで海外経験豊富な浅井氏は、どうやって英語を身につけたのだろう?
「英語を身につけるんだったら、米国の地方など日本人のいないところに行くべき。日常的に英語をしゃべる世界に身をおけば、実践の中で鍛えられますよ」
事実、浅井氏の英語力が伸びたのも、新聞社の海外特派員を勤めていた時代だという。
「私が初めて海外に行ったのは、1960年代半ばのマレーシア。新聞記者時代のことで、新しく生まれたマレーシアを見に行って案内されたんだけど、実際に行ってみると予備知識と全然違って刺激を受けたよね。それ以降、頻繁に海外に行くようになりました」
先ほどの「face to face」の話に通じるところがある。日本で英会話学校に通ったり、インターネットで英語のドキュメントを読むのもいいが、現地の人に直接触れないと得られない刺激もあるのだ。
「やっぱり直接行くと、電話や文字だけでは伝わらないものが自分で見えるし、熱気や匂いや感情的なものも感じられる。自分で歩かなければダメ。この本の冒頭でも言っているけど、『日本しか知らない人は、日本をもよく知らない』ってことなんです」
日本しか知らない人は、日本をもよく知らない──。インターネットの発達で、日本に居ながらして海外情報を手軽に手に入れられるようになった今だからこそ、肝に銘じておきたいひと言だ。
浅井信雄氏プロフィール
1935年生まれ。読売新聞社で、ジャカルタ、ニューデリー、カイロ各特派員、ワシントン支局長を経て、米国・ジョージタウン大学・戦略国際研究センター客員研究員。その後、東京大学、東京外語大学各講師、三菱総合研究所客員研究員、神戸市外国語大学国際関係学科・大学院教授などに従事。2003年より沖縄大学客員教授。
新書「日本の本当の順位」は、上記の他にも「マクドナルドの店舗数:2位」「人の良さ:8位」「スパム発信数:12位」など全部で6ジャンル、42の項目について世界の中の日本の順位がピックアップされ、それぞれについて数字の意味を浅井氏独特の語り口調で解説されている。
*撮影協力:東京都目黒・庭園美術館「cafe 茶洒 kanetanaka」
