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時事ニュースを読み解く “津田大介に聞け!!” 第10回

ニコニコ動画とJASRACの提携で、「歌ってみた」「演奏してみた」が合法に

2007年11月12日 09時00分更新

文● 編集部、語り●津田大介(ITジャーナリスト)

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JASRACは自分のビジネスを忠実に行なうだけ


── ニコニコ動画について、「著作権侵害の温床」というイメージを持っている人もいます。JASRAC的には、使用料を払ってもらえば、映像などの権利を侵害しているニコニコ動画が続いていても問題ないんでしょうか?

津田 JASRACのビジネスは、「自分たちが管理している音楽の著作物が流通する際、その使用料を取る」というところにあります。

 だから使用料を払わないケースは追求しますが、払ってくれるならコンテンツを使えば使うほど使用料が入ってくるので、自分たちが関与しない権利を侵害することについては優先度は低くなる。


── JASRACが回収するのは、具体的に何の使用料になります?

津田 ニコニコ動画でいえば、例えばあるアーティストのプロモーションビデオを投稿する場合、JASRACが管理する楽曲の歌詞や楽曲に対して利用料を払うことになります。

 その投稿がアーティストやレコード会社が持つ著作隣接権、映像の著作権などを侵害していてもJASRACはあえて止めず、「それはニワンゴさんが別途、きちんと交渉してくださいよ」という姿勢をとるでしょう。

 一方でJASRAC管理楽曲を使って、楽器を演奏したり、歌を歌ったりする動画については、隣接権処理は必要ではなく、著作権処理だけ行なえばいいので金さえ払ってもらえば、それは合法的にお墨付きが出せるわけですね。

著作権と著作隣接権


 著作権法では、作詞家や作曲家などが持つ「著作権」以外に、アーティストやレコード会社、放送事業者などに対して「著作隣接権」という権利を認めている。詳しくはJASRACのウェブサイト内にあるこちらや、こちらのページを参照してほしい。



SMILE VIDEOを用意したため、提携する必要があった


── 提携の時期がちょっと遅く感じますが、サービスを始める前にJASRACと話し合いは持たなかったんでしょうか?

津田 ニコニコ動画は当初、動画投稿用のサーバーにYouTubeを利用していて、そのときは法的な責任をYouTubeに「押し付ける」ことができました。

 しかし、今年の2月にYouTubeにニコニコ動画からのアクセスを遮断されたことで、サービスを継続するためにSMILE VIDEOなどの投稿用サーバーを用意するようになった。

 単に動画の上にコメントを付けるだけのサービスなら問題なかったんですが、投稿用サーバーを提供し始めたがために、自社のサービスが公衆送信権などを侵害するリスクも背負うことになったわけです。そこからJASRACとの調整を始めて、ある程度メドが着いたのでようやく今回「協議を始めた」と発表できるようになったのではないでしょうか。

 ちなみに、ヤマハの音楽コミュニティーサイト「MySound」(元「プレイヤーズ王国」)もJASRACと提携していて、ユーザーがプロの作った曲を歌ったり演奏したりして投稿する場合には、ヤマハが著作権料を肩代わりして支払っています(参考資料)。

MySound

「MySound」のウェブページ


今回の提携で何が合法になる?


 ニワンゴがJASRACに著作権料を支払うようになれば、ユーザーはJASRACが管理している楽曲を歌ったり、演奏したりした動画をニコニコ動画に合法的にアップロードできるようになる。JASRACに許諾を得たり、著作権使用料を支払うといった手続きはニワンゴが一括して行なってくれる。

 これにより、これまで問題があった「自分で作ったBGMを元に歌っている動画」や「学園祭で自分が演奏したライブの動画」なども自由に投稿できる。ただし、注意が必要なのは「曲に合わせて踊ったダンスの動画を投稿する」といったケース。自分で演奏した曲を使うぶんには問題ないが、CDからリッピングした曲には、レコード会社も権利(著作隣接権)を持っているので、その許諾を取る必要がある。


初出時、編集部側で「カラオケで歌っている動画は自由に投稿できる」と原稿に記しましたが、正しくはカラオケのBGMなどが著作隣接権に触れるためカラオケメーカーなどの許諾が必要になります。お詫びとともに訂正させていただきます(2007年11月12日)


(次ページに続く)

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