お役所的な融通の利かなさが摩擦を生む?
── ところでインターネットの一部では、JASRACに批判的な風潮があります。津田さんはJASRACについてどう思われますか?
津田 いろいろ複雑な思いはありますが、僕自身はネットで言われているほどひどいという悪印象は持っていません。
実際に音楽業界の人と話すと、JASRACが存在していることで「食えている」ミュージシャンが数多くいることは事実ですし。彼らがきちんと「仕事」をすることで音楽が産業として成立している部分もあれば、一方で彼らの「取りやすいところからお金を取る」というスタンスが、徴収の現場でさまざまな反感につながっているのも事実でしょう。功罪両面あると思いますよ。
あと、お役所的な融通の利かなさはありますよね。「規定に沿って利用料さえ払ってくれれば、楽曲の利用を許可する」というビジネスモデルを徹底して守ろうとするがゆえに、いろいろな摩擦を生み出してしまう。
過去にもネットで個人が合法的に音楽を配信したいというニーズがあった際、「個人からの申し込みは、規定にありませんから」とつっぱねることが多かったようです。
JASRACも時代に合わせてルールを作り直していますが、結局実際にルールが決まるまでに2、3年かかったり、出来上がったルールの利用料金が個人で払うには高すぎたりと、あまり実態に即していない微妙な部分もあるわけです。
── JASRAC批判の中は、「回収した利用料が著作者にどう分配されているかが見えにくい」という意見もあります。これについてはどう思われますか?
津田 分配が不透明なのは、一概にJASRACだけの問題とはいいきれません。
きっちり使用料を回収しても、課金方法がブランケット方式(使用回数ではなく、一定の期間/割合で課金する方法)なっているものは、構造上きっちり分配できません。例えばテレビ放送局の場合、番組のBGMで流した曲を逐一報告すると手間がかかり過ぎるため、1週間といった単位の「見なし報告」で使用楽曲を報告していました。今はテレビで使ったぶんは1回ずつ報告するという方針に変わってきていますが。
金額的に零細な利用については、報告してもしなくてもあまり分配に反映されないなんて話もあります。逆にJASRAC会員のミュージシャンから聞いた話では、いきなりそこそこの金額が振り込まれて「何で急にこんなに金もらえるの?」と思ったら「放送使用料です」と説明されたようなこともあったりするそうです。
そういう曖昧な部分が「分配が見えにくい」という批判につながっているのではないでしょうか。
── JASRACが、小規模なカラオケボックスやライブハウスからも厳しく使用料を回収していますね。
津田 カラオケボックスやライブハウスは、一般企業に比べると利用料を取りやすい存在なのかもしれませんが、今はインタ−ネットなど音楽が利用される場が増えています。そうした利用実態から考えると、カラオケボックスやライブハウスから取っている使用料は適切なのかという話もしなければならないでしょう。
しかし、音楽著作権の管理という業務は事実上、JASRACの独占状態になっているので、なかなかそういう議論を業界内で行ないにくい。今後は、人の配置や利用料とその回収方法も、時代に合わせて変えていかなければならないと思います。
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