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栗原潔の“エンタープライズ・コンピューティング新世紀” 第14回

エンタープライズサーチの真の価値を探る(4)――結構親密なサーチとBIの関係

2007年11月05日 12時00分更新

文● 栗原潔

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BIとサーチ融合の考慮点


 しかし、このようなBIとサーチの融合を実現する際には、いくつかの運用上の考慮点がある。第一にセキュリティの問題がある。

 一般に、現実のBIのシステムにおいて、細かなアクセス制御が行なわれていることはあまりない。もともと、BIは本社の計画部門など、特定グループ内のユーザーが自由にデータを分析・加工するために利用されていることが多かったからだ。

 しかし、BIのレポートやグラフをサーチにより検索可能にすることで、ターゲットユーザー層が大きく拡大する可能性がある。この結果、機密性が高い情報が予期せず流出してしまうリスクが高まる。BIとサーチの融合を進める際には、セキュリティに関する要件と運用方法を再度検討する必要があるかもしれない。

 もうひとつの考慮点は、BIのそもそもの運用方法に関するものだ。

 BIをサーチ可能にするということは、BIのヘビーユーザー以外のユーザーに対しても、BIのレポートなどに対する簡便なアクセス手段を提供することにある。

 例えば、「製品Xは私の担当範囲の製品ではない。しかし、ひょっとして私の担当製品Yと売れ行きの相関があるかもしれない。そうなれば、クロスセルの機会(関連商品を売る機会)があるかもしれない。これを検証するためにXの売り上げレポートを入手したい」というケースだ。

 こういった気付きがあった際に、製品Xのレポートをサーチを使って容易に見付け出せれば価値は高いだろう。しかし、本社の計画部門のスタッフが、頻繁にサーチを使ってBIレポートを検索していたとするならば、これはそもそものBIアプリケーションの構築が適切でないことを意味するかもしれない。

 なぜなら、BIの本来的な姿は、ダッシュボード(コックピット)により、自分の責任範囲の情報を一別でき、問題がありそうな箇所を自由にドリルダウンして詳細分析できるというものだからだ。

 このようなメインのフローにおいて、サーチが頻繁に利用されるということは、コックピットの設計そのものが適切でないことを意味するかもしれない。もちろん、そのユーザーがきわめてクリエイティブであり、IT部門も想像しなかった新しい分析パターンを次々と考え出しているという望ましい状態である可能性もあるが。

 いずれにせよ、(特にIT部門の人間にとっては)今まではまったく異なる世界と考えられがちだったBIとサーチの間で、エンドユーザーの立場に立って融合を検討するというのは十分に価値がある取り組みと言えるだろう。


筆者紹介-栗原潔

著者近影 - 栗原潔さん

(株)テックバイザージェイピー代表、弁理士。日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より独立。先進ITと知財を中心としたコンサルティング業務に従事している。東京大学工学部卒、米MIT計算機科学科修士課程修了。主な訳書に『ライフサイクル・イノベーション』(ジェフリー・ムーア著、翔泳社刊)がある。


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