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「実はニコニコ動画はあまり見ていないんです」

内輪ウケをオープンに──手塚眞が語る「国際ニコニコ映画祭」の狙い

2007年11月02日 21時04分更新

文● 松本佳代子、編集部 語り●手塚眞 写真●三井昌志

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考えない方が、面白いニコニコ用の動画ができる


 そんな手塚氏がニコニコ映画祭の応募作品に望むのは、もちろん通常のきれいにまとまった映像ではない。

「どんなにすばらしくても、僕は普通にCMなどで見られる技術的に凝ったものは選ばないでしょう。一番大切にしたいのはオリジナルであるということ」

 実はプロにとって、ニコニコ的な映像を作るのは案外難しいそうだ。

「僕も最初、ニコニコ用の動画を作ろうと思ったんですけど、僕らプロは、つい面白さというものを計算してしまうんです。でも、そうじゃなくて『偶然にできてしまったような計算外の面白さがいいんだろうな』と思い直して作っていません。頭で考えてしまうと難しいですね。ニコニコ用の作品というのは、考えないのが一番いいのかもしれません」



ニコニコの映像は、手塚治虫漫画と同じ!?


 同時に手塚氏が応募作品に期待するのは、プロに欠けている「シンプル」という要素だ。

「今の映像の技術はどんどん進んでますが、僕が考えるいい映像というのは、シンプルかつストレートなもの。今は複雑化して平均化された映像が多くて、力強いものではないから、その場限りで残っていかないんです」

 手塚氏は、父である手塚治虫を引き合いに出す。

「父のマンガが好まれている理由は、非常にシンプルであるためだと思います。今のマンガは、絵柄は達者だけど、複雑化することで弱くなっているのかもしれません」

 もちろんプロクリエイターであれば、クライアントの要望や製作時間の制約など、さまざまな条件を考慮して作品を作ることになるだろう。一方でニコニコ動画では、そうした複雑さを排除して、もの作りの原点に立ち返ることができる。だからニコニコ的な作品は魅力を放ち、息の長いエンターテインメントになる可能性を秘めているのかもしれない。

「ニコニコの映像は、ケータイで撮っても面白ければ投稿できるので、非常にシンプルで強いものになる可能性が強いんです。別の言い方をすると、CGを駆使した今のハリウッド映画より、昔の作品の方が印象深いのと同じです。例えば、アクションスターといえば、今の俳優より、ブルース・リーや初期の頃のジャッキー・チェンのほうが心に残っていますよね」


(次ページに続く)

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