このページの本文へ

ケンウッドの高音質プレーヤーを聴いた

【レビュー】2年の蓄積が凝縮された高音質 ケンウッド「HD60GD9」

2007年10月30日 17時55分更新

文● 編集部 小林 久

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

複数のヘッドホン、ソースで試聴


 音質に関しては、店頭モデルの「HD60GD9」(ブラックモデル)と、直販サイト「Kenwood ec direct」限定で販売される「HD60GD9 EC」(ホワイトモデル)をケンウッドから借用した。これを筆者所有の「HD20GA7」と比較しながら試聴してみた。

ブラックとホワイト

店頭モデルの「HD60GD9」はブラックの筐体(右上)、直販限定の「HD60GD9 EC」はホワイトの筐体だ(左下)

 なお、HD60GD9 ECはシャーシーの部分が金メッキされており、接触部分の抵抗が減るため、より効果的にアースできる点が特徴となる(関連記事3)。

 ヘッドホンはSHUREの「E4c」(29Ω、109dB/mW)、AKGの「K171 Studio」(55Ω、94dB/mW)、SENNHEISERの「HD25-1II」(70Ω、120dB)、ケンウッドの「KH-C711」の4モデルを中心とし、女性ボーカル、バイオリン独奏、サウンドトラックなど複数のソース(いずれもWAV形式)を聴いてみた。

使用したヘッドホンの特徴
SENNHEISER HD25-1II 音圧感度が高く、繊細で包まれる感じの広い音場の再現が得意。高域に若干キン付きがある点と、HD60GD9との組み合わせでは、高感度ゆえに無音部分の残留ノイズを拾いやすい点が難点。
AKG K171 Studio モニタータイプヘッドホンのため、ソースの違いが明瞭に分かる。高域の音色に特徴があり、低域もパワフルだが、出力の低いアンプだと中域が引っ込んだドンシャリ傾向になりやすい。ドライブ能力にゆとりがある本機との組み合わせでは特に問題を感じない。能率は低めのため、残留ノイズもほとんど気にならない。
SHURE E4c 繊細な表現が可能なバランスド・アーマチュアタイプのドライバーを採用したカナル型ヘッドホン。解像感の高さと柔らかな音調が特徴。感度はHD25-1IIより低いが、インピーダンスも低いため、音量はこちらのほうが取れる。傾向としてはやや中域が張り出した感じで、情報量、高域の伸びなどはHD25-1IIより若干譲る。残留ノイズは感じる。
KENWOOD KH-C711 パワフルな表現が特徴のダイナミック型ドライバーを採用したカナル型ヘッドホン。中低域が前に出てくる、闊達で元気な印象の鳴り。残留ノイズは感じるが気にならないレベル。1万円以下の価格帯ということもあり、情報量では、上の3機種に劣る面はあるが、聴いていて楽しく、バランスの良さを感じる。


弱音の表現力が増し、音楽の見通しがよくなった


 音質に関して総合すると、初代機からの特徴である伸びのある高域と高い解像感というキャラクターは保ちながら、中低域に厚みが加わり、従来機のHD60GB9よりもサウンドステージがひとまわり大きくなったという印象である。基本的な傾向としては、HD20GA7と変わらないが、音の存在感やスケール感、空間の広さなどは格段の進歩を遂げており、一聴して「これまでと違う仕上がり」と確信することができた。

KENWOOD KH-C711

HD60GD9と同時期に発表になったカナル型ヘッドホン「KENWOOD KH-C711」

 もうひとつ印象に残ったのが、残響など弱音の表現がより一層繊細になった点だ。これは聴感上のS/N(ノイズの少なさ)が向上し、弱音がより明瞭に分離するようになったためだと思われる。

 これにより音の見通しがよくなり、(混濁しがちな中低域でも)それぞれの楽器が奏でる旋律の違いが容易に聞き分けられるようになってくる。結果として、楽器を弾いている(あるいは打楽器を叩いている)プレーヤーのテクニックなども明確になってきて、臨場感がずいぶんと向上した印象だ。

 今回試聴したソースで「これらがよく表現されている」と感じたのは、NORAH JONESの「Come Away With Me」(SACD盤)の5曲目(Come Away With Me)。冒頭のシンバルのクレッシェンドで曲が始まる部分では、始まりのより小さな音が聞こえるようになるため、直前の静寂感が一層際立つ。これにボーカルが加わると、今度は少しハスキーな歌声に「リバーブのエフェクトがかかっていたのだ」と気付かされるぐらい、細かな再現がなされていることに驚嘆する。

 7曲目(Turn Me On)では、バックで曲に色を添えるオルガンの分離の良さと透明感を感じさせる音色が印象的だ。HD20GA7では、ほかの音と混じって聞こえにくい部分だった。また、スネアドラムの抜けのいい音色は、信号に歪みやなまりが少ないためだろう。たまにパーカッションやベースが共振してブリンと響く音なども入ってきて、どのように演奏されているのかが手に取るように分かって面白い。

カテゴリートップへ

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中