シングルスレッドアプリにはキャッシュ増がよく効く
さて、気になるベンチマーク結果を確認していこう。まずはピュアな演算性能を見る「Sandra 2007」のCPU(グラフ1)。このテストはキャッシュの効果もほとんど反映されないため、整数演算については同クロックの「QX6850」とほぼ同じになっているが、FPU(浮動小数点演算)については大きくスコアを伸ばしている。これはPenrynで「Radix-16」という高速な割り算回路が実装されたことも影響していると思われるが、それにしても大きな伸びである。
SSEなどを用いたマルチメディア演算では、整数、浮動小数点ともに、ほぼ同スコアとなった。このテストもキャッシュに影響されにくいほか、テストがまだSSE4に対応していないと思われることを考えれば、当然の結果だ。
グラフ2は円周率の計算を行なう「SUPER π」の実行時間。同クロックの「QX6850」に対して2秒、率にして13%の高速化を果たした。このテストはシングルスレッドであるため、1つのダイ上の6MBのキャッシュを「SUPER π」が占有できる。「QX6850」の4MBより多くの領域を使えることで、大きなメモリ領域を相手に演算を行うアプリで、かなりの性能向上が得られることが見て取れる。
グラフ3は、これもほぼシングルスレッドと思われる、ゲーム「Unreal Tournament 2003」を用いたテストだが、シーンが次々切り替わる=キャッシュの効果があまり大きくなさそうなFlyByのスコアはほとんど伸びていないのに対し、同じ風景のなかでのバトルが行われる=キャッシュが効きそうなBotmatchにおいては11%も高速になっている。
マルチスレッドでもキャッシュ効果は着実!
SSE4+キャッシュ増量の効果は20%?
グラフ4は、2スレッドが動くWMVファイルのエンコーダ「Windows Media Encoder 9」でのエンコード時間。テストでは、これも約9%と、比較的大きな速度向上が得られている。一方で、4スレッドが動くCGレンダリングテスト「Cinebench 2003」のスコアは2%と微増にとどまった。もっとも、最新の「Cinebench R10」では9%の向上を見せている(グラフ5)。処理がヘビーなほど、利用するメモリセットが大きく、キャッシュの効果が大きいということかもしれない。一方で、異種アプリケーションが同時に動く「PCMark 05」においてはトータル、CPUの両スコアとも、大差ない結果に終わっている(グラフ6)。ひょっとすると、一つのアプリが複数のスレッドを立てる場合のほうが、キャッシュ利用の効率がいいのかもしれない。
4スレッドが動く「Windows Media Encoder Advanced Profile」や、「DivX 6.1」によるファイル圧縮は、ともに7%前後の性能向上を見せている(グラフ7、8)。今回のテストでは、キャッシュ増量は十分効果を発揮していると言えそうだ。
(次ページへ続く)
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