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開発者に聞く「α700」のこだわりどころ

2007年10月27日 11時00分更新

文● 小林伸(カメラマン)

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ノイズ好きの筆者は、少しさびしく感じた


 画質面では、α100に対して大幅な高感度対応を果たした点が特徴である。これはノイズが少なく、素性のよいイメージセンサーを新たに採用した点が大きい。

Exmor

Exmor。発表会では20万円の価値があるセンサーと冗談交じりに紹介されていた

 有効1224万画素のCMOSセンサー「Exmor」(エクスモア)は、オンチップカラムAD変換と名付けられたセンサー内でのA/D変換(従来のセンサーでは、アナログ信号を一度基板上に読み出してデジタル化していた)と、A/D変換の前後に2回のノイズリダクション処理を行なう「デュアルノイズリダクション」という2つのノイズ対策が施されている。

 筆者は基本的に、自然発生的に出るノイズは許せるし、カメラの個性として楽しむタイプの人間だ。逆に、画像処理エンジンで作為的にノイズ除去された画像には好感を持っていない。

画像処理担当の石橋氏

画像処理を担当したAMC事業部 開発部の石橋真哉氏

 試用できたのはβ機だったため、画像の比較掲載は行なわないが、普段使っているD200と比較してみた。それぞれ最高感度(D200はISO 3200相当、α700はISO 6400相当)で見比べてみると、α700ではザラついた偽色ノイズが格段に減っている。ある意味「別世界」という印象で、ノイズ好きの筆者は逆に「寂しさ」すら感じた。

 信号増幅による「トーンや色味の変化」は確かに感じられたが、それ自体不自然さを感じるようなものではない。

 ダイナミックレンジ(階調性を決める最小輝度と最高輝度の差)に関しても開発者に聞いてみたのだが「ISO 200以上ではハイライト側で2/3EVほどダイナミックレンジは広がっています」(AMC事業部 開発部 石橋真哉氏)とのこと。

 ハイライト部分がしつこく粘ってすぐに飛ばないのは大変ありがたいことだ。特に女性のポートレイトなどを撮影する時など、肌の階調を残しつつギリギリまで明るめに仕上げたい時に威力を発揮しそうである。β機でさえこれなのだから、製品版ではさらにチューニングが進むのだろう。期待は大である。



持ってみて「しっくり」くるなら、良きパートナーになれる


 α700に関して、ソニーはあまりスペックを全面に押し出した宣伝活動をしていないように感じている。

 その理由のひとつには、α700がスペック競争よりも、操作感を含めた全体的なバランスにより重点を置いた設計であるからだろう。今回の取材でも、基本スペックよりもむしろ撮影状況にどのように対応していくか、「撮る」「操る」楽しみをいかにスポイルしないように心がけたかを強く説明された。そしてその取り組みの一端は少ない試用時間でも確実に感じることができた。

 確かに、α700は一点だけ飛びぬけた個性がある「とんがったカメラ」でもないし、星取表で勝つことを第一に設計された「優等生的なカメラ」でもない。

 しかし「撮りたい」という気持ちに素直に応え、「またファインダーをのぞきたいな」と思わせる。α700はそんな「人に優しいカメラ」でもあると筆者は感じたのである。

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