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開発者ブラム・コーエンも登場した「BitTorrent Conference 2007」

BitTorrent日本法人に角川が10億円出資し、2008年に商用サービスを開始

2007年10月22日 22時28分更新

文● 編集部 小林 久

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 BitTorrent(株)は22日、同社の技術およびビジネスに対して説明するセミナー「BitTorrent Conference 2007」を開催した。

公園の様子

コーエン氏の講演はBitTorrent日本法人代表取締役社長の脇山弘敏氏とのトークショー形式で進行

 「BitTorrent」は、ブラム・コーエン(Bram Cohen)氏が2001年に発表した、P2P技術利用のファイル交換プロトコル。オープンソースで開発され、進化を遂げてきた。2004年には、同氏とアシュウィン・ナヴィン(Ashwin Navin)氏の手で米BitTorrent社が創業されており、コーエン氏は同社のChief Scientist、ナヴィン氏は社長に就任している。日本法人の「BitTorrent株式会社」は今年9月に設立されたばかり。



Winnyのような匿名性はない


 BitTorrentは、大容量のファイルを高速かつ効率よく配布するために開発された。ファイルをネットワークに接続した複数のピア(通信相手)から相互に融通し合うことで、ネットワーク帯域を効率よく使用し、(配布元のサーバーなどに)負荷が一極集中することを防げる点が特徴となる。「人気のあるファイルほど高速にダウンロードできる」というのもセールスポイントだ。

 また、匿名性を持つWinnyなどとは異なり、ユーザーがどのファイルを共有しているかが分かる仕組みになっているため、違法なコンテンツ配布への対策が取れる点も特徴。「Tracker」と呼ばれるサーバーを利用して、ファイル流通状況をピアごとに管理できる仕組みも持つ。

 現状ではBitTorrent技術を利用した海賊版配布サイトなども少なからずあるが、インターネットを利用した動画配信など、コンテンツ配信の分野にも有効活用できる技術として、注目を集めている。

 今回のセミナーでは、米国本社から共同創業者のコーエン氏とナヴィン氏が来日。約1時間の講演をこなしたほか、(株)角川グループホールディングスがBitTorrent(株)に約10億円の資本参加を行なうこと、コンテンツ配信大手の(株)Jストリームと協業を進めていくことなども発表になった。角川グループは、実証実験を重ねたのち、2008年にP2P技術を利用した動画配信ビジネスに参入する。



「日本はP2Pの実験に最適な環境」と開発者のブラム・コーエン氏


 来日したコーエン氏は、講演の冒頭で「BitTorrentは2001年ごろ、自宅の古いラップトップを使い、ダイニングの椅子に座りながら開発した」こと、「アップロードの帯域をいかに有効に活用していくかが、発想の根源にあった」ことなど、BitTorrent開発の経緯と歴史を紹介した。

コーエン氏

コーエン氏。シャイな技術者といった雰囲気

 同氏は日本のブロードバンド環境に関して、1.5Mbps程度の回線が主流の米国に対して、100MbpsのFTTHが広範に普及しており、ピア間で高速な通信が行なえる点を指摘。一方でホスティングに関しては高価であるという現状もあり、回線状態、コストの両面でP2Pの検証に関しては理想的な環境であると話した。

 BitTorrentを利用した、違法コンテンツの配布/流通に対してどういう立場をとっているかという質問に対しては「海賊版のサイトと何かをやることは避けている」としたものの、「不正なところとかかわるつもりはないが、人気はあるようだ。ユーザーも多く、BitTorrentが配信に適している点を証明している面もある」とした。

ナヴィン氏。BitTorrentの共同創業者

 同氏はYouTubeについて「すばらしいサイトだが、配信されているビジュアルに関してはプアだ。(コンテンツ配信者向けのBitTorrent配信サービスである)BitTorrent DNAを使えば、より高品位なコンテンツの提供が可能になる」とコメント。BitTorrent DNAの機能追加に関しても「まだまだやっていかなければならないところはある。コーディングに関してもやっていかなければならない」と話していた。

 また、共同創業者で社長のナヴィン氏も「日本にはインターネット環境が整っていて、コンテンツデリバリーに関して面白いユーザー体験を得られる」「ニコニコ動画やmixiといった有名なサービスもあり、インフォメーションの提供だけでなく、ワークシェアにも利用しているという点は面白い」など、ネットインフラの整った日本でのビジネス展開に期待を示していた。

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