望遠系レンズを多用できない南国事情
今回、どうしてボクが標準ズームにこだわってるのかというと、実は手軽さ以外にも理由がある。タイなどの高温多湿気候の地域では、空気中の水蒸気が太陽光を乱反射することによって薄いガス(霞のようなもの)が発生する。おかげで、望遠系レンズを用いて被写体から離れて撮影すると、描写のコントラストがかなり低下してしまう。 日本なら冬を待てば気温が下がるので、被写体からかなり離れてもクリアーに撮れるのだが、常夏の国ではそれはちょっと無理な相談だ。
特にカンチャナブリー周辺のように、大量に水が蒸発する川や水田を挟んだ撮影地では、ガスがかかったような描写になりやすい。カメラを三脚に設置する時点で視界がクリアーだったとしても、その直後に気温が上昇して急激に水蒸気が発生する可能性もある。だから、結局は標準ズームで被写体に適度に接近して撮るのがいちばん確実なのだ。

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