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斉藤博貴の“タイ鉄道写真紀行” 第3回

タイ国鉄三等客車で出会った人々を撮る

2007年10月24日 09時30分更新

文● 斉藤博貴

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車内での人物撮影は露出のプラス補正が吉!


 窓が開けっ放しの客車内で人物を撮影する場合は、自動露出で撮るなら露出補正が基本だ。それは窓の外の明るさにだまされて、主題であるはずの人物が露出不足によって暗めに描写される失敗を避けるためだ。露出ブラケットによる連写撮影もしておけば、狙った露出を大きく外すこともないだろう。

 標準ズームでは、広角側が通常28mm。あっても24mmなので、狭い車内では人物と背景を一緒に写すことは難しい。もし、実効焦点距離17mmくらいをカバーする超広角ズームレンズがあればもっといろいろな撮影ができる。しかし、レンズを交換しながら撮影するほどに熱中すると、折角の鉄道旅行の方を楽しめなくなってしまう。実は個人的には、写真の画角の違いにこだわるよりも、記録するべき思い出作りにこだわった方が、結局はいい結果が出ると考えている

 サーラーヤー駅を発車してしばらくすると、隣のボックスが空になったのでJちゃんとママは、離れた座席に座っていたパパを呼んで家族3人で集まることができた。安心したのか、全員がそのまま熟睡モードに入ってしまった。

昼寝をする乗客1

鉄道を使った長旅は飽きたら寝るに限る。特にタイのように暑い国では寝るのも特技のひとつとなる(プログラムAE +0.7EV ISO 200 AWB 手ぶれ補正ON)

昼寝をする乗客2

(プログラムAE +0.7EV ISO 400 AWB 手ぶれ補正ON)

 列車は15時30分になって、車窓からも見える巨大な仏塔で有名なナコン・パトム駅を通過した。そのあたりで、ボクの座るボックスに顔はちょっと怖いけれど優しいおじさんがやって来た。「おい、線路沿いに野焼きしてるぞ。撮れ!」、「あれは友達の家だ。撮れ!」と撮影指導をしてくれる。「あなたの事も撮りたいんですけど」とモジモジしながら言い出すと、おじさんも苦笑いしながら「ん~撮れ!」とナイス・レスポンス。

バナナ畑を背景におじさんを撮影

車窓から流れるバナナ畑を背景におじさんを撮影。下の写真より、こちらのほうが自然でいい。28mmしか持ち合わせないのなら、28mmの描写に似合ったフレームで撮ればいいだけだ (シャッター優先AE 1/25秒 +0.7EV ISO 200 AWB 手ぶれ補正ON)

28mmの画角ギリギリに撮影

ライブビュー使用。ちょうど28mmの画角に、ほぼ全身を隙間がないくらいの配置で撮影できた。しかし、ここまで超広角を意識して無理するのはどうかと思う(プログラムAE +1EV ISO 400 AWB 手ぶれ補正ON)

 南幹線から2本の支線が分岐するノーン・プラードゥック分岐点を発車したあたりで、車内の人物と車外の流れる風景を一緒に描写できないものかと、2通りに露出補正を行なって撮影した。どちらがいいかは好みが分かれると思う。ボクも見たときの気分で決まりそうだったので、両方撮影しておいた。さすが無料で何通りにでも撮れるデジタル。これで後悔しないですむ。

客車内の露出を優先して撮影

客車内の露出を優先して撮影。人物ははっきり写ったが、車窓を流れる風景の描写が浅い(シャッター優先AE 1/25秒 +0.7EV ISO 200 AWB 手ぶれ補正ON)

客車外の露出を優先して撮影

客車外の露出を優先して撮影。風景は狙い通りに濃い色で撮れたが、客車内の人物の描写が暗い(シャッター優先AE 1/25秒 +0.3EV ISO 200 AWB 手ぶれ補正ON)

 ノーン・プラードゥック分岐点は、旧泰緬鉄道(たいめんてつどう:第二次世界大戦中に日本軍によって建設された鉄道)であるナムトック支線とスパンブリー支線の起点駅だ。かつてはミャンマーのタンビュザヤまでの約420kmを連接していた旧泰緬鉄道の鉄路は、今ではサイヨーク滝観光の拠点となるナムトック駅を終着駅としている。映画「戦場にかける橋」のクワイ川鉄橋だけでなく、チョンカイの切り通し(カオプゥン山)やアルヒル桟道橋(タム・グラセー橋)等の難所は、今でも列車が往復している。

 最後に、何の役にも立たない鉄道タイ語講座。タイ語で機関車は「ロットチャク」、寝台車は「ロット・ノーン」、駅は「サタニー・ロットファイ」、普通列車は「ロット・タンマダー」、近郊列車は「ロット・チャーンムアン」。1オクターブ声を高めにして喋ると通じやすいかも。

カンチャナブリー駅に到着

16時50分にカンチャナブリー駅に到着。単線のため列車交換に時間がかかったなどの事情で定刻よりも約30分遅れた



著者近影

筆者紹介─斉藤博貴(さいとう ひろたか)


執筆から編集までこなす鉄道系カメラマン。タイとカンボジアの鉄道を調査するために1996年より約5年間バンコクに滞在した。特技は英語とタイ語で、ライフワークは海外鉄道の撮影。最近では世界遺産として登録されたインドの「ダージリン・ヒマラヤン鉄道」と「ニルギリ登山鉄道」に通うようになった。著書に「技術のしくみからデザインまですべて分かる鉄道 (雑学を超えた教養シリーズ) 」(誠文堂新光社)がある。



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