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【短期集中連載】新聞はネットに飲み込まれるか? 第1回

「新聞の自殺」とまで言われたタブーに挑む産経グループ(前編)

2007年10月18日 16時00分更新

文● 松岡美樹

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紙を守るための提携


 だが産経新聞社はあえてそのタブーに立ち向かった。そしてネットと新聞のワク組みを取り払おうとしている。奇しくも同じ10月1日から、朝日、読売、日経の3社が提携してネット共同事業を始めると発表した。だがそんな産経から見れば、これら3社の強者連合は依然として「向こう側」にいる守旧勢力にすぎない。

 「朝日、読売、日経の3社連合は、新聞という『紙を守る』ためのものです」

 近藤氏は3社の提携に対して、そんな感想をもらした。一方で「われわれは紙もネットも同じように重要なツールとみなしています」と述べる。

 「産経新聞本紙の読者は現在、約200万人です。グループ全体で発行しているすべての新聞を合わせても、読者の数は400万人弱程度でしょうか。ところがネットのほうは、イザ!だけでも今年8月1ヵ月間のユニークユーザー数で1200万、同月のPVは1億2000万弱にもなっています」



マスメディアは滅び行く恐竜なのか?


 「新聞業界ではネットを使った新しい試みを始めると、『それは新聞の自殺だ』と言われます。ですがわれわれはメディアを使ったさまざまな実験をやるうちに、『どうやら紙とウェブが共食いすることはないぞ』と認識するようになった。ネットを使った新しいチャレンジを今までみたいに自粛したとしても、それは紙を守ることにはならないと考えています。ここがほかの新聞社と大きく違うところです」

 ベストセラー「ジュラシック・パーク」を書いたアメリカの人気作家、マイケル・クライトンは1993年の講演で、環境の変化に適応できずに滅び去った恐竜にマスメディアを喩えて「メディアザウルス」と呼び、「もうひとつの恐竜(マスメディア)も10年以内に跡形もなく消え去るだろう」と予言した。

 新聞とネットの垣根をなくそうとしている産経新聞から見れば、朝日、読売、日経の3社連合は滅び行く「メディアザウルス」であり、「われこそは生き残る恐竜の進化形だ」ということなのだろう。

(後編に続く)

松岡美樹(まつおかみき)

新聞、出版社を経てフリーランスのライター。ブロードバンド・ニュースサイトの「RBB TODAY」や、アスキーなどに連載・寄稿している。著書に『ニッポンの挑戦 インターネットの夜明け』(RBB PRESS/オーム社)などがある。自身のブログ「すちゃらかな日常 松岡美樹」も運営している。

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