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ちっとも説教臭くないエコロジー企画展

【レポート】水をテーマにしたデザイン&アートイベント――「Water展」

2007年10月15日 21時00分更新

文● 千葉英寿

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ITとアートの融合を極めた「aqua scape」
遠くの水琴窟&湧水の音に聞き耳を立てる贅沢


 携帯サイトやデータの活用など、最先端技術やITとの強力な連携で成立した作品の多い、同展だが、極めつけはこの竹村真一氏、川崎義博氏による「aqua scape」だろう。

aqua scape

「aqua scape」竹村真一、川崎義博(協力:Earth Literacy Program、(株)GKテック、(株)ウェザーニュース、(株)クララオンライン、藤川啓介/(株)スクイズ研究所、小林博樹)

 aqua scapeは会場内の柱に2つ設置された竹でできたヘッドフォンから、流れてくる水琴窟の音と湧水の音を楽しむ作品だ。実はこの音は、リアルタイムで採音された音なのだ。つまり会場から遠く離れた場所にある水の音をマイクで採音し、これをインターネットを介して、会場にオーディオ配信しているのだ。水琴窟の音は京都・相国寺瑞春院の水琴窟で、湧水の音は東京大学本郷キャンパスにある遊水池の三四郎池に仕掛けた水中マイクの音だ。まさに地球に聞き耳を立てる、インターネット聴診器というべき趣向だ。

ウェブ版aqua scape

「ウェブ版aqua scape」竹村真一、川崎義博、アラカワケンスケ、METAPHOR

 この試みは会場以外でも楽しむことができるようになっており、ウェブサイト「aqua scape[地球の水の聴診器]」(http://www.aqua-scape.jp)からまったく同じ音源を聞くことができる。Adobe Flashバージョンでは、自分で好きに回すことができる地球儀を配したサイトデザインで、今後は日本以外の場所でも採音した音が流される可能性ものぞかせている。

「落ち葉」より 1985~1995

「『落ち葉』より 1985~1995」石元泰博。写真家、石元氏の作品を特別に展示している。写真家の作品はこの他に藤井保氏の映像作品などもある

「猫の傘」と「ねずみの水滴」

「猫の傘」と「ねずみの水滴」佐藤 卓。会場中央のパティオに設置されており、そのスケール感に「自分が今、どこにいるのか分からなくなる」ような錯覚を覚える



 本展はメディアアートの展覧会ではないが、コンセプトとクリエイティブ、テクノロジーが絶妙なディレクションによりバランスを保ち、さらにデザインされたプロダクトに昇華された作品が多く目を引く。コンセプトだけが先行したり、デザインばかりが目立って、一般人には理解しにくい“伝わらない”作品が多い傾向にあるメディアアートと比べると、はるかに“伝わる”。ある意味、メディアアートを超えた作品に仕上がっていると言える。こうした分りやすさを持つのがデザインの強みと言えるのだろう。


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