「芸術家にお礼を言わなくては」と、お墓へ
── 私がジャンパラを知ったのは、世界中の偉人のお墓を巡った「世界恩人巡礼写真館」が切っ掛けでした。20年間も巡礼されているそうですが、これも芸術とつながりがあるんですか?
カジポン 作品に感動しているうちに、作者にお礼を伝えねばと思うようになったんです。「『モダン・タイムス』良かった! チャップリン最高!」と感動したあとに、「さ、ご飯ご飯」ってなるのか、「墓じゃー!!」ってなるのかの違いですね。
── いや、なかなか「墓じゃー」にならないですよ。
カジポン 僕の場合、作品に対するお礼を言わないことには人生が先に進まない。感動をもらいっぱなしって「人としてどうなの」と。何か気持ち悪いんですよね。
でももう、皆死んでいる。じゃあ、その人が一番最後にいた場所はどこか。それがお墓なわけですよ。お墓なら、どんなに偉大な人でも、僕みたいな人間にアポなしで会ってくれるというメリットもありますし(笑)。
── しかし、お墓となると、場所を調べるのが大変ではないでしょうか?
カジポン とことん現地調査です。地元で聞き込みしたり、現地の図書館で文献を調べたり。ネットがない時代は刑事の聞き込みのように、足で稼ぐしかなかったんですよ。英語は得意でないので、パントマイムとイラストでのやりとりばかりですが、何とかなります。
今はネットがあって便利ですけど、ガセネタには要注意ですね。以前、世界的に有名なお墓検索サイトに、ルキノ・ヴィスコンティという映画監督のお墓がローマにあると書かれていました。信じて行ったんですが、1日中探しても見つからない。帰国後、数ヵ月経って、別情報でナポリ湾に浮かぶ島にあると聞いて、卒倒しそうになりましたよ。
── お墓コーナーもひと通り完成していますし、最近は巡礼されていないんですか?
カジポン 今はもっぱら、2回目、3回目の巡礼が多いですね。最初の巡礼時はまだ未読の小説や未見の映画もたくさんあるわけです。それらに触れたあとに、「前はこんないい作品があるとは知りませんでした。すいません」と。だから、これからも何回も行かないといけないでしょうね。
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