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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第9回

約900人の墓巡礼から「ジョジョ立ち」まで──熱すぎる管理人の「芸術愛」に触れろ!

2007年10月15日 17時23分更新

文● 古田雄介

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芸術作品を全力で吸収&アウトプット

 

── まず最初に。本当に1人で運営しているんですか?

カジポン よく来る読者からのメールで、「文芸ジャンキー・パラダイスの皆さんへ」って書かれているんですよ(笑)。「映画担当の人に、この新作のコメントを聞きたい」とか。でも、本当に一人で書いています。

カジポン氏

カジポン・マルコ・残月氏。取材場所となったカジポン氏の部屋には、DVDレコーダーのほか、小説や画集、漫画、CDなどがぎっしり。たぶん、木造だったら床が抜けています……

 

── 「文芸」と一括りにしていますが、コーナーは映画や絵画、音楽、漫画、小説など多岐に渡っています。あれだけ膨大なジャンルを扱う意図は何でしょう?

カジポン ジャンパラでは便宜上ジャンル分けしていますが、「芸術には境がないんだ」ってことを言いたいんです。

 例えば、映画に興味があってうちのサイトに来てくれた人が、ロックのファンになって出て行ったら嬉しい。入り口と出口が違うということがたくさん起きればいいと思っています。

 文学とか絵画とか表現法は違っても、どれも「人間」が生んだものなんですよ。芸術作品を通して見えてくるのは、「国や宗教が違っても、家族や恋人を想う気持ちや自然を愛する心は皆一緒」ということです。

 

── それにしても、いち個人がこれだけの芸術作品に触れるのは、並大抵ではないと思います。一体、1日にどれだけの作品を鑑賞しているんですか?

カジポン 若いときの蓄積が多いですよ。20代の頃はインターネットがなかったから、形にする方法がほとんどありませんでした。ネットに出会ってからは、その蓄積をアウトプットするほうに力を注いでいますね。今は片っ端から映画を観るよりも、ジャンパラに情報を書き込みたいという感じです。

 

── と、おっしゃいながらも、後ろにDVDレコーダーが山積みされているんですが……。

カジポン 8番組は同時に録画できるようにしています(笑)。空き時間を作っては見ているんだけど、溜まっていく一方ですね。ジャンパラの読者からも「この漫画いいよ」とか「この映画は観るべき」ってお便りを頂くので、電車の乗り換えで3分間駅にいるときでも必ず小説や漫画を読みますし、生活のどんな小さな空き時間もすべて文芸の鑑賞に捧げています

 

── 吸収メインだった若い頃は、仕事を含めてどんな生活をされていたんですか?

カジポン 今は文芸研究家として執筆活動をしていますが、若い頃はトラックの運転手や農家の住み込み、保険の勧誘など色々やっていましたね。当時は、朝4時に起きて映画を1本観たあとに出勤するのが日課になっていました。帰宅してからは、もう、小説や画集、漫画、音楽をひたすら鑑賞しましたよ。倒れるまで(笑)。

 漱石の本やゴッホの画集を開いたまま机に突っ伏して、朝4時に目覚ましが鳴ったら「ピーンチ!」って起きるわけです。「やばい、寝てしまった」と。基本的には今も同じ感じです。インプットとアウトプットのバランスが違うだけで。

 

── なぜそんなに精力的に活動できるんでしょう。「今日はちょっと休もう」とか思いません?

カジポン エジソンの名言で「死んだあとゆっくり休め」ってありますし(笑)。マグロと一緒で「止まったら死ぬ」みたいな感覚で、休んでいるほうが怖いんですよ。

 止まった瞬間に時計の刻む音がするんです。時計というのは時限爆弾。何周かしたときに寿命が来て、必ず人間は死ぬんです。そのときにベッドの中で「俺はまだあの黒澤映画を見逃したままじゃないか」と後悔したくない。悔いを残さないため、精一杯やったと自分自身を納得させるために生きています。

 

(次ページに続く)

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