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過労死、自殺を防げ! ストレスの専門家に聞く「幸せに生きる方法」

2007年10月12日 16時30分更新

文● 松本佳代子、話●大美賀直子

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 「メンタルヘルス不全」という言葉を聞いたことがあるだろうか?

 メンタルヘルスとは「心の健康」のこと。メンタルヘルス不全と言うのは、何らかの要因で、心のバランスが崩れてしまった状態を指す。長時間労働や職場の人間関係など、さまざまなストレスと向き合っていかなければならない現代人にとって、切実になりつつある問題だ。

大美賀直子さん

メンタル・ジャーナリストの大美賀直子(おおみかなおこ)さん

 ウェブサイト「All About」で、「ストレス」コーナー担当をするフリーライターの大美賀直子さんにお会いする機会があったので話を聞いてみた。



30代に自殺者増加の危機!


 メンタルヘルス不全という言葉。筆者は「花粉アレルギー」のように、症状自体は以前からあったものに、分かりやすい名前が付いたために、みんなが口になるようになったのではないかと……と邪推していた。

「確かにストレスは昔からありました。しかし、自殺者の数は、10年前に年間3万人を超えて以降、景気が上向きになった現在でも一向に収まっていません」

 冒頭の筆者の問いに対して、大美賀さんはそんなふうに話し始めた。

「自殺した人の7割が『うつ病』と言われていますが、こうした精神疾患を含め、強いストレスを感じて職場に不適応を起こすと『メンタルヘルス不全』という状態になります。企業や社会もこの問題に対して敏感になってきています」

 ひとつの象徴は「板ばさみ世代」と表現される30~40代だ。以前は50~60代に多かった自殺者が、最近は働き盛りの30代にも増えてきているのだという。

 退職した団塊世代を補う形で、中間管理職的な業務が任されるこの世代。

 「終身雇用」から「成果主義」へと社会が大きく変わっていく中、その重圧も重くのしかかっている。長く続いた不況とそれに伴ったリストラで、職場は人材不足。景気回復とともに新人は増加するが、その面倒で余計に手間も増え、正社員であれば、外注化された業務委託スタッフの調整なども行なわなければならない。

 効率重視の方向に大きく動く社会で、一番あおりを受けているのがこの世代なのかもしれない。



自分にストレスはないと感じている人のほうが危険?


 では「メンタルヘルス不全」に陥らないためにはどうしたらいいのか。まずはストレス源をなくすことが第一だが、やっかいなことにストレスは重くなるほど、心が麻痺して自覚しにくくなることがある。「これくらい気力で吹き飛ばせる、と思っている人が病気の入り口にいたりするんです」と大美賀さんは言う。

 まずは自分の心の状態を的確にとらえるのが重要だ。病気と健康な状態が紙一重なだけに、自覚症状がないか自問自答してみてはいかがだろうか。

 
(1) 眠りが浅くなってきた
朝から夜中近くまでの長時間残業が続くと、頭が興奮状態になり目がさえてなかなか寝付けない。明け方近くになってようやく眠れたと思ったら起床時間という状態で、寝不足が続く

(2) 打たれ弱くなった
ちょっとしたことで、気分が凹むようになった。以前にくらべて気分転換が下手になって、うまくいかないことが起こると、ずっと気になってしまう

(3) 肩こり、頭痛、腰痛などがひどくなった
疲労が身体症状に現れている証拠、ため息も増えてないですか?



心にも「柔軟体操」が必要


 それでは、ストレスの自覚症状があった場合、どうすればいいのか。

「病気になる前に、自分でセルフケアすることが必要です。ストレスを感じても、心が軟らかいとストレスに強くなれる。軟らかい心というのは、物事の見方をプラスに変えられる豊かな感性です。職場と家の往復だけの『単調な生活』が続くと、こうした感性が麻痺してしまいがちです。まずは、日常生活の細かい部分に楽しみをプラスして、軟らかい心を育ててみてはいかがでしょう」

 具体的には、朝いつもより早く通勤して会社近くのカフェに寄り道してみる。帰り道に気候が良ければひと駅分を歩いてみる、会社帰りに家に直行せずバーに寄ってみる、デスクワークしていると四季の移り変わりに鈍感になるが、空を見上げて秋の月の堪能してみる――などが挙げられるという。

 「日常生活を少し変えるだけで結構幸せになれる」というのが、大美賀さんの提案だ。体を動かしてほぐすように、心に刺激を与えて、活性化を図る。そんな試みも心の健康にプラスに働く。


(次ページに続く)

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