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斉藤博貴の“タイ鉄道写真紀行” 第1回

アジアの大地を走る「ブルートレイン」

2007年10月11日 20時01分更新

文● 斉藤博貴

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プラットフォームに集まるさまざまな表情


乗車を待つ若いタイ人カップル

乗車を待つ若いタイ人カップル。行き先表示板には「松本」の文字がある。ほかには「東京」とか「静岡」もある。もちろん「B寝台」の表示もそのままだ

 タイ国鉄の最大の魅力は、人々の日常を溶け込むことを許してしまう懐の深さだ。クルンテープ駅で列車を待つ人々は、久々の帰郷に胸を躍らせる笑顔と、しばらく家族や恋人のもとを離れる不安気な表情の2つに分けることができる。

 列車から降りてくる人々の中には、大都会バンコクを生まれて初めて目にする出稼労働者たちの期待と恐怖心が混ざった不思議な表情も混じっている。さらに、明らかに乗客ではないカップルたちが駅のコンコースで語り合う。タイの鉄道駅という空間は、日本では見られなくなった情の深い風景に満ちているのだ。



タイで活躍する日本の鉄道


 タイ国鉄は、全線約4000kmの鉄道網。ネットワークの中心は首都バンコクのフワラムポーン地区にあるクルンテープ駅。合わせて4本の幹線と15ヵ所の終着駅を持つ。終着駅のうちの4つが隣国との国境駅となっている。全線が軌間1mの非電化区間。

お詫びと訂正:掲載当初、「12ヵ所の終着駅」と記述していいましたが、正しくは「15ヵ所の終着駅」になります。ここにお詫びすると共に訂正いたします。(2007年10月15日)

プラットホームで散髪する人々

プラットホームでなぜか散髪するタイの人々。日本ではちょっと考えられない光景だが、タイでは「まあ、ありかな」と思えるのが不思議だ

 首都近郊を除けば、ほとんどが単線区間の構成だ。列車編成はディーゼル機関車牽引列車か自走式ディーゼルカーの2種に別れる。

 機関車の最新モデルは日本製と米国製。ほかに、フランス製とドイツ製がある。

 車籍を取得する蒸気機関車は全5両。すべてが日本製となっている。客車の最新のモデルは韓国製。ほかに、日本製、さらに少量ながら自国生産となるタイ製がある。ディーゼルカーは最新のモデルは韓国製。主力は日本製。ほかに英国製がある。

タイ国鉄のプラットホームは地上高

タイ国鉄のプラットホームは日本と異なり地上高。乗り降りは客車の乗降扉に備え付けられたはしごを使用する。女性や年配者には優しくない

ブルートレインへの乗車に備えて飲料水を大量に買い込んだ母娘家族。故郷の家族のもとに里帰り。明日も違う誰かがまったく同じ光景を演じることは間違いない

 日本では体験できない「国際列車」は定期便が2本。バンコクとマレーシアのバッターワースを結ぶ寝台特急列車と、南部のハッヂャイとマレーシアの首都クアラ・ルンプールを結ぶ寝台特急列車「ランカウィー・エクスプレス」だ。豪華列車の「イースタン・オリエンタル・エクスプレス」はタイ国鉄による運営ではないが、不定期ならがシンガポール~マレーシア~タイを結んでいる。

 JR西日本から無償供与された24系寝台客車(ブルートレイン)の運用を2006年に開始するなど、タイ国鉄はボクが住んでいた頃とは違う魅力を持ち始めている。次回も日本とはひと味違う、タイの鉄道風景をデジカメ片手にレポートする予定だ。


著者近影 斉藤さん

筆者紹介─斉藤博貴(さいとう ひろたか)


執筆から編集までこなす鉄道系カメラマン。タイとカンボジアの鉄道を調査するために1996年より約5年間バンコクに滞在した。特技は英語とタイ語で、ライフワークは海外鉄道の撮影。最近では世界遺産として登録されたインドの「ダージリン・ヒマラヤン鉄道」と「ニルギリ登山鉄道」に通うようになった。著書に「技術のしくみからデザインまですべてわかる鉄道 (雑学を超えた教養シリーズ) 」(誠文堂新光社)がある。



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