iTunes Storeに本気で対向していく
── アップルは7月末、iTSの販売楽曲数が累計で30億を突破し、Amazonを抜いて米国第3位の音楽小売業者になったと発表しています。これがAmazon MP3のスタートに影響しているのでしょうか?
津田 元々Amazonはかなり昔からデジタル音楽販売について積極的な姿勢を示していました。それが今回、これだけ本格的な形でダウンロード販売も始めたというのは、いよいよ本気でiTSに対抗していくということだと思います。
iTSのiTunes Plusは、通常のDRMありの楽曲より値段が高く設定されています。一方でAmazon MP3はiTSに比べて全体的に価格が安いし、そもそもDRMありの楽曲がカタログに含まれていません。
音楽配信サービスというのは、ちょっと気になった楽曲をすぐに購入して聴けるというところが魅力です。iTSより価格が安くて、iPod以外の音楽プレーヤーでも再生できるとなると、ユーザーが「あ、この曲よさそう」と思ったときに、iTSではなくAmazon MP3を選ぶ可能性は十分に出てくるでしょうね。
── iTunes StoreやAmazon MP3は、現状でも使いやすいサービスだとは思いますが、津田さん的に「ここを直してほしい」という点はありますか?
津田 iTunes StoreにもAmazonにも共通する問題としては「楽曲の検索性」が挙げれられます。どちらも今のところ、基本的に楽曲名やアーティスト名中心の検索方法しか用意されていないんです。
音楽ファンの中には、自分の気に入っている作曲者やプロデューサーの名前で楽曲を検索したいという人もいるでしょう。このあたりの音楽固有の「検索問題」を早くクリアしたほうが、今後の勝負に勝っていくんじゃないかなと個人的には思ってます。
「着うた」があるため日本でDRMフリーは難しい
── 日本でもAmazon MP3は始まるでしょうか?
津田 日本では「着うた」が売れていて、がっちりDRMをかけて販売するという体制をレコード会社が望んでいるため、同じサービスをそのまま持ってきて始めるというのは難しいと思います。
映画やテレビ番組のダウンロード販売を行なっていないように、日本のiTSでも現状、米国のiTSと同じ水準のサービスを提供しているわけではありません。Amazon MP3はiTS以上にハードルが高いので、日本で実現するのは当分の間は困難でしょう。
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