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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第8回

元シンクタンクの達人が明かす「だまされない統計データの読み方」

2007年10月01日 10時00分更新

文● 古田雄介

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骨太シンクタンクの意志を継いでサイトを立ち上げ


── 社会実情データ図録を始めたいきさつを教えてください。

本川 働いていたシンクタンク(政策立案のための調査や分析を行う機関)が潰れたのがきっかけですね。そこは、クライアントの官庁や自治体に都合の悪いデータでも、客観性を重視してそのまま提示するような骨太な機関でした。戦争中、正直すぎるデータを提示し、軍部の怒りを買って投獄された人間が創始者でしたから(笑)。

 統計というのは、必ずしも政策とは一致せず、戦争中は逆に政策のための統計を作らされることもあったんです。現在はそんなことも滅多にないでしょうけど、政策によって真実が歪められることはあり得る。その信念から、特にデータを重視するシンクタンクになったんです。

 こういういい伝統が失われるのはもったいないから、一人でもやってやろうと思いました。もちろん、データそのものが個人的に好きというのもありますよ。

本川氏

大学院時代から約30年間、統計の世界で生きてきた本川裕氏。現在はフリーのデータウォッチャーとして活動している

── 統計データのプロとしての下地があるから、これだけたくさんの情報を集めることができるわけですか。

本川 いや、今は恵まれていて、ほとんどの情報はネットで誰でも手に入れられます。昔は図書館に足しげく通わなければならなかったんですけどね。

 ただ、ネットにある情報は膨大すぎるので、その中から意味のあるデータを見つけるという点で、蓄積したノウハウは確かに生きていますね。

── 官庁のサイトは分かりづらいですよね。総務省のトップページから色々たどって、ようやくPDFの56ページで見つけた! とか。

本川 そうそう(笑)。あと、統計を利用するにも、使われている係数がどういう特性を持っているのか知らないと使いづらい。そういう点でも、一日の長はあるかもしれませんね。

(次ページに続く)

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