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いよいよ10月1日から一般提供開始

「緊急地震速報」で急速拡大中 防災ビジネスはどこへ行く

2007年10月09日 17時23分更新

文● 渡辺 実(防災・危機管理ジャーナリスト、(株)まちづくり計画研究所所長)

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防災ビジネス
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一次情報を受けるには、利用目的が一定の条件にかなうか気象庁からの確認を得る必要がある。現在提供を受けているのは、一般企業や地方公共団体、研究機関を含め、合計623カ所。そのひとつ、(株)インフォテック(代表取締役 角田 勉氏・写真左上)は、ホームオートメーション用コントローラの開発を手がけていた関係で参入。写真にある様々なタイプの製品や試作機を開発しているが、なかでも目玉は無線LAN対応の受信機だ。

 今年の10月1日から「緊急地震速報」が一般運用される。これは気象庁から発表され、これにより地震が起きた後にあなたのいる場所へあと何秒で震度いくつの揺れが襲ってくるかが予測できる。すでに工場や鉄道機関などでは先行利用されているが、10月1日以降は①テレビ・ラジオ放送(NHKテレビ・ラジオと一部民放テレビ局が予定)、②一部の自治体防災行政無線、③施設の館内放送、④緊急地震速報専用端末機器、⑤携帯電話(予定)で一般にも見聞きできる。筆者の事務所でも実証実験を行っており、これまで数多くの緊急地震速報を受信、複数の受信専用端末で検証を続けている。

 これは人類が初めて接するものであり、日本にしかない、生命を守る「究極の減災情報」なのだ。7月16日に発生した新潟県中越沖地震でも気象庁から緊急地震速報が発表され、揺れが到達する前に安全確保がなされた例がいくつも報告されている。しかし現段階で、緊急地震速報には限界がある。地震発生時の初期微動P波と主要動S波との速度差によって緊急地震速報を計算することから、P波とS波との時間差がない直下型地震のような震源地の直上では緊急地震速報が間に合わないこと、想定震度に±1程度の誤差があること、推定到達時間が数秒~数十秒であることなどがあげられる。したがって、こうしたシステムや情報の限界を理解して緊急地震速報を活用しなければならない。

 現在、多くのコンピュータ解析会社、通信事業者、IT企業などがこの業界に参入している。情報伝達の仕組みは、気象庁から気象業務センター経由でデータが配信された後に、用途にあった内容に解析し端末に表示するというものだ。特に各家庭やマンションに導入する専用端末機器の開発・商品化は活発化している。

 しかし、秒を争う情報伝達であること、確実に24時間365日端末機器の性能を維持・管理すること、普及のために廉価な価格で頒布可能なことなどが要求される機器であり、早急に情報機器としての性能ガイドラインの設定が望まれ、認証制度を構築しなければならない。同時に、緊急地震速報専用端末機器(ハード)のみを販売すればよいのではなく、速報を受け取ったユーザーが的確に生命を守る行動が取れるよう研修・講習・訓練などソフトを併せて普及する必要がある。さらに、現在の緊急地震速報は、気象庁が発表する「情報」であるが、これを「警報」に格上げする議論が始まっていると聞いている。警報になれば、より厳格な情報伝達が求められることになる。参入にあたってはこれまでの情報機器とは異なった特性があることを忘れてはならない。

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