リスクを考慮した予備費を計上していない
コストマネジメントのポイントは、見積もりの予算に予備費を組み込むことです。その予備費はリスクを考慮して計上します。一般的には+10%~15%程度の確保は必要です。予備費を取れば、オーバー分を予備費が吸収し、問題も起こらないかもしれません。予備に使えるお金がないと、コストを抑える手段を選択しがちになり、プロジェクトマネージャーの打てる手数も少なくなってしまいます。
予備費に関しては受注側が確保するのはもちろんですが、発注者側も確保します。受注側、発注側の双方が予備費を持っていれば、それぞれの問題やリスクへの対応が可能になります。
また、ITのプロジェクトでよくあるのが“とりあえず進めましょう”と曖昧なままプロジェクトを進行してしまうことです。ビルや橋を造る建設業と違って、ITの場合、後でなんとかなる(プログラムの修正はすぐできる)という意識が発注者側にあります。発注者はあまりお金もかからず、すぐに直せるだろうと考えがちなのです。しかし、もちろん簡単には修正できませんし、修正するには相応のコストがかかります。さらには、システムの構造も劣化してしまいます。一度やった仕事をまたやり直す修正の手戻り作業をするのが1番よくない事態でしょう。本来その時間でほかの仕事ができるので、機会を損失していることにもなります。手戻り作業で作り直すことは2倍のコストがかかると考えてください。それに、手戻り作業はメンバーにとって精神的にもつらいものです。
スコープがコストに最も影響する
コストに最も影響するのは、第2回連載で解説したスコープです。スコープが曖昧だとコストの見積もり精度が低く、前述のような手戻り作業も発生する可能性が高くなります。できるだけ早い段階でスコープの曖昧さを排除し、確実なものにしていくことに努めるべきです。スコープの早期確定、そしてリスクの想定、問題の早期発見。これらの意識が、結果的にコストの超過を防止していくことにつながります。
プロジェクト成功のポイント
・受注側、発注側双方が予備費を必ず確保する。
・見積もりの算出の場合は組織のプロセス資産を生かしコストの項目を漏らさないようにする
・コスト見積もりは精度を上げるために繰り返し見積もる。
■関連スキルアップコース(富士通ラーニングメディア)
・システム開発におけるWBS作成と見積り
・プロジェクトマネジメントの技法
■情報ブログ「人材育成の最前線」
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