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【インタビュー】作家 戸梶圭太「少年は痛い目にあって大人にならなければいけないのです」

2007年09月28日 00時00分更新

文● 第五書籍編集部 田島美絵子

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 現代日本の恥部に焦点をあて、笑いに昇華する作家、戸梶圭太氏。地方都市の犯罪、貧困、パチンコから近所の子どもの変わった名前まで――誰もが見て見ぬふりをして通り過ぎていく日常から切り取る非日常は、社会や人間に対する読者の違和感を鮮明にし、ニヒリスティックな笑いを誘う。


 そんな作家 戸梶圭太氏がなんと子ども向けアニメ「シルクロード少年ユート」の原案を担当されたという。このカップリング、ファンの方々には非常に意外かつ興味深い試みではないだろうか(しかも題材は戸梶作品初の“タイムトラベル”!)。


 そしてついに10月より、そのアニメ「シルクロード少年ユート」の地上波放送(10月7日よりNHK教育で毎週日曜17:25~)が開始されることになった。


 小説「シルクロード少年ユート」第3巻「たとえ帰れなくても」(完結編)も9月28日に刊行され、さらに精力的に活躍の場を広げる戸梶圭太氏に、アニメや小説にまつわる話題についてのFAXインタビューを行なった。



戸梶圭太 プロフィール

戸梶圭太氏

戸梶圭太氏

 1968年、東京生まれ。学習院大学文学部心理学科卒。就職せずに作曲家・ギタリストを目指しつつも、小説を書き始める。1998年「闇の楽園」で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、作家デビュー。著書は「シルクロード少年ユート」「溺れる魚」「ご近所探偵TOMOE」「バカをあやつれ!」など40作ほど。「溺れる魚」は仲間由紀恵主演で映画化され、「ご近所探偵TOMOE」は宮藤官九郎主演でドラマ化された。また、NHKアニメ「シルクロード少年ユート」では原案を担当。数年前から私財で自著の映画化も始める。趣味は写真とエレキギターの改造。好きな音楽はテクノ。

シルクロード少年ユート

「シルクロード少年ユート 3 たとえ帰れなくても」 戸梶圭太 著 寺田克也 画 (c)「シルクロード少年ユート」製作委員会/A5判・ハードカバー/ISBN 978-4-7561-5011-0/2100円+税/原案者自らが同名のアニメをノベライズ。9月28日にアスキーより刊行され、めでたく完結した狂気と笑いのSFタイムトラベル小説。なお本作ではアニメ監督アミノテツロ氏が解説を執筆しており、「トカジは誰もが目をそらしている真実へと導いてしまった」とのお墨付き



「いいお話アニメなんて見たくない!!!」


―― アニメ「シルクロード少年ユート」の原案を担当された経緯をお教え下さい。

●戸梶氏 ごくシンプルです。
 日本映画界の大物(のはず)仕掛け人から「これこれこういうアニメの話があるんだけど興味ない?」「よくわかんないけどやります」
 これで決まり。

―― 原案に際し、どのようなテーマや狙いがございましたか?

●戸梶氏 シルクロード、タイムマシン。これだけが与えられたので、テーマだの狙いだの考えずにとにかく楽しく妄想を膨らませました。

―― 子ども時代から現在に至るまで、どのようなアニメをご覧になったことがございますか? また影響を受けたアニメ作品などがございましたらお教え下さい。

●戸梶氏 旧(ふる)いアニメが好きです。「ピンク・パンサー※1」と「ペネロッピー絶体絶命※2」は私にとって不朽の名作です。
 最近の作品では「スポンジ・ボブ※3」と「アトミック・ベティ※4」が私の中で殿堂入りしました。
 日本のアニメの致命的に弱いところはドタバタがなく、国民全体にもドタバタアニメを楽しむ余裕がないことです。いいお話アニメなんて見たくない!!!

※1ピンクパンサー 1964年に公開された実写映画「ピンクの豹」をもとに製作された名作アニメ。同映画のオープニングに登場したアニメキャラクターが人気を博し、その後独立したアニメ作品として製作され、テレビ放映された。
※2ペネロッピー絶体絶命 1969年製作。監督は「トムとジェリー」のウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラ。莫大な遺産を受け継いだ美女ペネロッピーが主人公。父の執事に扮した怪人マントメガネに、彼女が毎話、命を狙われるストーリー。
※3スポンジ・ボブ 1999年製作。海底都市でパイナップルの家に住む直方体の海綿動物スポンジ・ボブが主人公。NHK教育で今年9月まで放送されていた。奇しくもアニメ「シルクロード少年ユート」は同チャンネル同曜日同時間帯で10月から放送を開始する。
※4アトミック・ベティ 2004年製作。ごく普通の女の子ベティが、銀河警備員として宇宙や地球で起こるさまざまな事件解決に奔走するアクションコメディ。



「感受性の鋭い子どもにショックを与えたい」


―― 先生の著作は大人向けの作品が多く、子ども向けアニメの原案を担当なさることを意外に思われたファンの方も多いと思います。子ども向けの作品に携わるということで、今までとは違った不都合や、逆にいつもと違うチャレンジなどございましたか?

●戸梶氏 私は大人向け、子ども向けなどを意識して作品を書きません。
 実際、私のキツーい作品を図書館などで借りて読んでいるティーンエイジャー(しかもローティーン)も多いのです。良かれ悪かれ、感受性の鋭い子どもにショックを与えたいという気持ちは作家なら皆もっていると思います。

―― 小説「シルクロード少年ユート」3巻の解説で、アミノテツロ監督(アニメ「シルクロード少年ユート」監督)が書いてらっしゃいましたが、原案から大分変更があってアニメが出来上がったそうですね。たとえば原案ではユートが主人公でなかったそうですし……。原案はどんなお話だったのでしょうか? またキャラ設定や世界設定、ストーリーでどんなところが変更があって、どんなところがそのままだったのですか?

●戸梶氏 もう忘れちゃった!



「少年は痛い目にあって大人にならなければいけないのです」


―― アニメでは描かれず、小説では執筆できたエピソードや設定などがありましたらお教え下さい。

●戸梶氏 ほぼすべてのエピソードと設定がアニメでは描かれなかったものです※5

※5 小説版のストーリーはアニメとリンクしつつも異なる、戸梶氏のオリジナル。第1巻ではラモーンやジーナたちの時間旅行に至った経緯、第2巻では無茶なタイムトラベルによって生じたタイムパラドクスから登場した時間警察によるスラップスティック、第3巻では精神崩壊(!)・人類滅亡(!?)・そして地獄(!!)までのストーリーが描かれる。また登場人物はアニメのキャラクターに戸梶氏のテイストが加わり、かなり強烈な性格になっている。

―― 小説執筆に際して、アニメとは違った狙いや、表現などがございましたらお教え下さい。

●戸梶氏 安易にポジティヴな物語にしないこと。少年は痛い目にあって大人にならなければいけないのです。



「若い女性に、決して安易に世の中と妥協して欲しくない」


―― 小説では愛すべきキャラクターの男性たちがたくさん登場してきますね。気の優しい少年ユート、友人が少なく気弱な高校生アンディ、物理オタクでロストバージンのために奮闘する大学生ランドレッド、無責任で打たれ強い貧乏中年ラモーンなどなど。そんな男性の登場人物とは対照的に、女性の登場人物はきつくてわがままなタイプが多いです。ヒステリックな女子高生ジーナや、人命を屁とも思わない女大富豪バーバラとチャン、卑劣で争いごとが大好きな元アイドルの双子姉妹リン・ランなど。男性と女性の性格の対比は意識的に設定なさったのでしょうか。また、お気に入りのキャラクターなどございましたらお教え下さい。

●戸梶氏 私は適当にうまく世の中になじんでいる美人がきらいなのです。美人は不美人よりも他人に多くの影響を与えることができます。美人というだけで人は耳を傾けるから。
 だからその力を善い方向、世の中のおかしい事に対して「それはおかしいだろ!」というアクションに向ける使命があると思います。
 ですから私はジーナのようないつも何か目に見えていない大きなシステムに怒りを抱いている若い女性に、決して安易に世の中と妥協して欲しくないと望んでおります。

―― 先生は小説以外にも、写真、イラスト(「シルクロード少年ユート 3 ありえない出会い」ではパラパラ漫画が掲載されています)、音楽、映画など幅広くご活躍されていますね。中でも映画は監督業までこなしてらっしゃいます。以前他のインタビューで、小説を執筆されるにあたって絵コンテを切るとお伺いしたのですが、小説「シルクロード少年ユート」でも同様の過程をふんで制作なさったのでしょうか?

●戸梶氏 最近は脳内スクリーンに以前より早く画をだせるようになったのでコンテは描いておりません。

―― 今後の作品を発表する予定がございましたら、お教え下さい。

  • 下流少年サクタロウ」(文藝春秋社刊)発売中
  • 刊行日未定の書き下ろし「ディープトリップ7」。SFミステリコメディアクションを執筆中
  • 裁判員の物語「コートでは泣かない」が「小説推理」(双葉社刊)で10月から連載開始

―― 今ご興味のあるテーマはございますか?

●戸梶氏 別れの物語を書きたい! 最近人と別れるということ、それが自分に及ぼす影響にすごく興味があるのです。


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