●遠距離火力 空自F2の支援攻撃、そして大口径火砲の射撃
遠雷のような音はすれども姿は見えず、と思いきや、演習場右方遙か上空に現れたゴマ粒のような点が見る見る大きくなる。航空自衛隊(空自)の支援戦闘機F2が侵入してくる。晴れていても慣れていないとなかなか見つけにくい。
F2支援戦闘機
支援戦闘機とは空自独自の用語で、他国では戦闘爆撃機など戦術支援を行うための攻撃機を指す。味方地上部隊支援の為の爆撃、洋上の敵艦船へのミサイル攻撃などが主な用途となる。なお、このF2は、日米で共同開発した機体で、2000年から配備されている。
空自のF2が飛び去ると共に82式式通信車に先導された特科部隊が演習場に進入してきた。この“特科”とは、自衛隊独自の呼び方で、他国軍や旧軍(旧日本陸軍を指す)では“砲兵”に相当する名称だ。演習場に手際よく展開した特科部隊各車両は、砲撃目標を三段山に定め、まず最初に各火砲ごと、そしてその後全火砲で一斉射撃を行なう。
さらに凄いのが、発射諸元等を調整し、富士山前面、二の台上空に爆発で富士山の形を描き出したことだ。これは練度が高くないと出来ない技だ。描き出された瞬間、思わず我々も感嘆の声を上げてしまった。
82式指揮通信車
99式自走155mm榴弾砲(りゅうだんぽう)
ちなみに自走砲は戦車と似た外観を持つが、あくまでも大砲を自走化し機動力を持たせただけなので、直接相手と撃ち合いをする用途には向かない。さっと展開して射撃し、済んだらすぐに別の場所に移動、という用い方がされる。要は戦車とは機能、用途とも大きく異なる兵器なのだ。となると、すべての火砲を牽引式から自走式にすれば良いかとも思うが、コストや輸送(特に空輸)を考えるとなかなかそうも行かない。
203mm自走榴弾砲(じそうりゅうだんぽう)
155mm榴弾砲FH-70
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