iPodが久々にラインアップ一新となった。
今年前半のアップルは、iPhoneの出荷に全力を注いだため、Macの新ハード、新OS、新アプリケーションの出荷も、iPod新製品の出荷も先送りされ続けていた。製品を仕上げて出荷するのは、大変な労力を要するもの。6月末まではiPhoneにかかりっきりになっていたのだ。
しかし、そのおかげで今年後半に入ってからは、数製品がまとめて発表されるため、なかなか面白い状況になっている。
今回もわずか1時間強の基調講演でiPodシリーズ全ラインアップ、なんと4製品計13モデルが一挙に発表された。これだけ発表されると、新製品の展示もなかなか壮観だ。発表された4製品のいずれもが、強烈な個性と魅力を発揮しているのだから恐れ入る。
最も魅力薄はshuffle!?
あえて筆者の主観を交えて、いちばん魅力が薄い機種を挙げるとしたら、色以外に特に変わらなかったiPod shuffleになる。
だが、このiPod shuffleも、まったく引きがないかといえば、そんなことはない。iPod shuffleは、“ムシャクシャした時の衝動買い”くらいの勢いで買える手頃な価格設定が絶妙だ。
赤いshuffleには激しいロック、青いshuffleには落ち着いたクラシックといった感じで、その日の気分で色も音楽も着替えたくなるような親しみやすさがある。
実物をみると欲しくなるnano
今回のApple Special Eventでは、最後のオオトリとしてiPod touchが発表された。確かに革新的で目を引くのはiPod touchだろう。それは間違いない。
だが、このオオトリ発表前の時点でいちばんの目玉だったのは、間違いなくiPod nanoだ。
一部のIT系情報ウェブサイトに流出したiPod nanoの写真が掲載されたときには「かっこ悪い」という声もあった。しかし、そう思っていた人も、実物を見た瞬間に印象が180度変わり「かわいい」と声をあげているはず。
今日、国内のApple Special Evnetに集まった200人近いプレスの間でも同様の話題で持ち切りだった。
真っ正面から見ると、横長でややぶかっこうに見えなくもないが、これは写真のマジックだ。実際の製品で、その薄さと小ささを感じた瞬間、印象がガラっと変わる。これもアップルの工業デザインの魔法だろう。
心に訴えかけるユーザーインターフェース
そういわれれば、歴代のiPodの中にも、最初に写真を見たときはギョっと目を見張ったものの、実際にものを見たり、触れたり、使い込んだりしていくうちに、その美しさに惚れ惚れしてきた、というケースが少なくない。
iPod nanoでいえば、まずあの小さい本体で、立派にビデオ再生できるだけでも感動ものだ。それに加えて選曲をしたり、写真のアルバムを選んだりといった細かな操作1つ1つに対しても、Macユーザーにはおなじみのケン・バーンズ・エフェクトを思わせる、情感にうったえかけるゆったりとしたパンニングアニメーションで、心をくすぐってくれる。
たかが音楽プレーヤーに、ここまでの愛らしさを盛り込めるメーカーはアップルをおいて他にないはずだ。
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