栗原潔の“エンタープライズ・コンピューティング新世紀” 第10回
いまあえてWeb 2.0を分析する(10)――企業内Web 2.0と切っても切れないエンタープライズサーチ
2007年09月05日 00時00分更新
そして、第3の方法として仮想統合がある。各アプリケーションは独自の情報を抱えつつ、独自の処理をしているが、利用者が情報をアクセスする時に、複数のアプリケーションをまたがって情報を統合し、あたかもデータが一箇所にあるかのように見せてくれるミドルウェアを活用するという方法だ。
定型データの場合には、この種のミドルウェアをEII(Enterprise Information Integration)と呼ぶことが多い 。そして、前回も述べたように、非定型データ(文書、スライド、スプレッドシート)などの仮想統合を行なうことこそが、まさにエンタープライズサーチが提供する機能に他ならない。
物理統合、メッセージ連携、仮想統合という3つのアプローチはそれぞれ一長一短があり、企業内で適切に組み合わせて利用する必要がある。
例えば、情報の絶対的な整合性が求められる用途では物理統合が最適の手法だ。トランザクションにより頻繁に更新される情報の統合にはメッセージ連携が最適だ。仮想統合は、物理的統合が本質的に困難な多様性を有する情報を「緩やかに」統合する場合に適する。
厳格な整合性よりも、柔軟性が求められるようなパターンだ。ゆえに、一般的には知識管理のための非定型コンテンツの統合には、エンタープライズサーチが最適なケースが多いと言えるだろう。
前回にも、エンタープライズサーチの機能のひとつとして情報の仮想統合があるという点について説明したが、このように情報統合に対する3種類のアプローチという視点から考えることで、エンタープライズサーチの位置づけがより明確になるのではないだろうか。
筆者紹介-栗原潔
(株)テックバイザージェイピー代表、弁理士。日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より独立。先進ITと知財を中心としたコンサルティング業務に従事している。東京大学工学部卒、米MIT計算機科学科修士課程修了。主な訳書に『ライフサイクル・イノベーション』(ジェフリー・ムーア著、翔泳社刊)がある。
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